今回は、前回紹介したパーツを使って水冷CPUクーラーを使ったPCを組んでいく。
水冷CPUクーラーは、CPUから熱を奪う「ヘッド」、熱を排出する「ラジエーター」、熱を運ぶ「クーラント(冷却液)」と「チューブ」、クーラントを循環させる「ポンプ」と「リザーバータンク」で構成されている。ヘッドで受け取った熱をクーラントに移し、ラジエーターで冷却するという仕組みは前回解説した通りだ。
今回組み立てに使うPCパーツは以下の通り。ただし、今回は水冷クーラーの組み込み部分を主に扱うため、PCケースとマザーボードしか使わない。
水冷キット | Thermaltake Pacific Gaming R240 D5 Water Cooling Kit |
クーラント | Thermaltake C1000 Pure Clear Opaque Coolant 1000ml |
CPU | AMD Ryzen 7 2700 |
メモリー | Corsair CMK16GX4M2A2400C18(8GBx2) |
マザーボード | ASRock X470 TAICHI |
SSD | Crucial MX300 M.2 SSD 275GB |
グラフィックボード | ASRock Phantom Gaming X Radeon RX580 8G |
PCケース | Thermaltake VIEW 31 TG |
電源ユニット | Thermaltake TOUGHPOWER GRAND RGB 650W |
使用するパーツに制約はあまりないが、PCケースは水冷に適しているモデルを選ぼう。ラジエーターを取り付けるスペースがあるか、リザーバータンクとポンプを固定するための場所があるかを見ておく。今回使用したThermaltakeの「VIEW 31 TG」は上面、底面にねじを通す穴が多数空いており、ファンやラジエーターを取り付けやすくなっている。
組み立てを始めよう
水冷クーラーの組み立てでは、使用するパーツが多いだけでなく、チューブの長さを測ってカットするという工程がある。パーツの配置によってフィッティング間の距離が変わるため、あらかじめチューブの長さを決めておけないからだ。自作PCでは基本的に自分でパーツを加工することはないので、少しハードルが高く感じるかもしれない。しかし、ソフトチューブなら精密な加工精度は不要なので、身構えなくても大丈夫だ。
ラジエーターやリザーバータンクなどはPCケースの外に置くモデルもあるが、PCケース内に設置できた方がコンパクトになる。大掛かりになると作業の難易度が上がり、注意点も増えるため、初めて水冷に挑戦するのであればPCケース内に必要最低限の構成で組むのが無難だ。
自作PCの組み立てでは、干渉して後からは取り付けができない、または取り付けしにくい部分から組み立てるのが基本手順となる。水冷クーラーを使うと手順が少し複雑になってしまう点は注意しておこう。今回は仮組みの工程を進めていく。
マザーボードにヘッドを付ける
まず、マザーボードの準備をする。ヘッドを固定するためのマウンターを取り付けよう。ヘッドには出荷時点でIntel製CPU用の固定用クリップが取り付けてある。今回はAMDの「Ryzen 7 2700」を使っているため、AMD用に交換する。
CPUソケット脇のレバーを持ち上げ、CPUを取り付ける。CPU底面には細いピンが多数ある。簡単に曲がってしまうので、取り扱いには注意しよう。向きはCPUとソケットの三角形のマークの位置を合わせるとよい。
PCケースにポンプ・リザーバータンクとラジエーターを取り付ける
これでマザーボードの準備ができた。マザーボードをPCケースに取り付けよう。メモリーはまだ差さなくてよい。次にポンプ・リザーバータンクとラジエーターの準備をする。フィッティングはあと4個使うので、手元に出しておこう。
チューブを配管する
ここからは配管だ。チューブにはソフトタイプとハードタイプがあり、今回使用しているのはソフトタイプ。ハードタイプはかなり正確な折り曲げ加工が必要になるので、入門用にはソフトタイプがお薦めだ。ソフトタイプなら、チューブの長さは直線で結ぶところ以外は多少長過ぎても問題ない。1つだけ注意するのは、無理な角度で折り曲げてはいけないということだ。曲げ過ぎるとチューブが潰れてしまう場合がある。チューブが潰れてしまうと、そこでクーラントの流れが悪くなり冷却能力が落ちてしまう。
また、この時経路も考えておこう。今回の構成なら「ポンプ-ヘッド-ラジエーター」のルートがお薦め。ヘッドから熱を奪ってラジエーターで冷却するという順番になる。経路を変えると配管のルートが変わるため、チューブが干渉してしまう場合は検討してみるとよい。またグラフィックボードを使う場合は、マザーボードの拡張スロットの上を通るチューブは少し長めに取っておく。
チューブを切り出す際は測った分よりも少し長めに切っておくとよい。断面がまっすぐになるよう処理するため若干短くなるのと、長過ぎた場合に調節できるためだ。短か過ぎた場合は対応できないため、最悪の場合チューブを買い直すことになる。
印に沿ってチューブを切る。専用のチューブカッターを使うときれいに切れるが、普通のはさみでもよい。切った後、断面がチューブに対して垂直になるように加工しよう。多少ぎざぎざになっている程度なら問題ないが、斜めになっているとチューブが外れやすくなる。
ここからが本番
フィッティングやチューブの切り出しなど、一体型水冷クーラーではかなりの作業が省略されていたことが分かるだろう。もちろん組み立てはこれで終わりではなく、まだ形ができただけだ。
次回は水漏れのチェックをし、PCを完成させる。
(文・写真=SPOOL)
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