製品レポート

Thermaltakeのキットで始める本格水冷入門【手順その3】水漏れチェックと仕上げ

水漏れなどの動作チェック、PCを本組みして完成

前回までで水冷クーラーの基礎部分まで組み上がった。今回は水冷部分の動作チェックをし、PCを完成させる。

前回水冷クーラー部分の仮組みをした。今回はこれらを一旦PCケースから外し、作業台の上で水漏れ等の動作チェックをする。今回は比較的シンプルな構成なので外せたが、ヘッドやラジエーターを増やしていたり、ハードタイプのチューブを使っていたりすると外すのが現実的でない場合もある。必ずしも今回の手順が正しく、こうしなければいけないわけではない。あくまで一例として考えてほしい。

今回は水冷クーラー部分を外すところから始める

前回、チューブを切り出して配管するところまで進めた。今回は水冷クーラー部分を外すところから始める。

今回は水冷クーラー部分を外すところから始める

水冷クーラーの構成パーツをPCケースから外した。動作チェックを行うため、電源ユニットをつなぐ。

動作チェックを行う

動作チェックは、ポンプがきちんと動くかどうか、またフィッティング等からクーラーントが漏れたりしないかを確認する作業だ。PCを一通り組んだ後、動作中に水漏れが起こるとPCパーツの故障につながる。決して飛ばしてはいけない重要な工程だ。

クーラー部分をPCから外せない場合は、マザーボードと電源ユニット以外のパーツをPCケースから外した状態で、ポンプだけに電源をつないでテストするとよい。多少濡れただけであれば、動作中でなければ無事なことも多い。もちろんマザーボードが濡れてしまった場合は拭き取り、しっかりと乾かそう。

まず使う物の準備だ。電源ユニット、キットに入っている「24pin ATX Bridge Tool」、精製水、洗瓶(またはじょうご)、タオル、洗面器を用意する。ここではまだクーラントは使わない。一度精製水を循環させることで、水漏れをチェックすると同時にラジエーターやヘッドの内部を洗浄するためだ。精製水を捨てる際に洗面器を使う。洗面器はバケツなどでもよい。

24pin ATX Bridge Tool

「24pin ATX Bridge Tool」は24ピン端子の16番と18番を結線するアダプターだ。16番が電源オンの信号なので、マザーボードにつながなくても電源を入れられる。

中央にあるのが洗瓶

中央にあるのが洗瓶。洗瓶がお薦めだが、他にも注ぎ口のあるカップやじょうごも使える。

ポンプを動かして水漏れをチェック

電源ユニットにポンプの電源端子とACケーブルをつないだら、主電源をオフにした状態で24pin ATX Bridge Toolを24ピンケーブルにつなぐ。主電源がオンになっているとアダプターをつないだ瞬間に電源が入るため、必ずオフの状態で取り付けよう。水の入っていない状態でポンプを動かすと故障する恐れがある。

次に洗瓶に精製水を移し、リザーバータンクに精製水を入れる。じょうごなど他の機器を使ってもよいが、洗瓶の方が簡単で安全だ。ノズルをリザーバータンクに差し込んで注水できるのでこぼれないし、水量の調整もしやすい。

ある程度水位が高くなったら電源をオンにしてポンプを動かす。ここでのポイントは、電源は入れたり切ったりを細かく繰り返すこと。ポンプが動くと、リザーバータンク程度の水量はあっという間に送り出されてしまう。洗瓶で精製水を追加しても全く追いつかない。水位が下がったら電源をオフにし、精製水を追加したらまたオンにする、を繰り返す。

全体に行き渡ると、精製水がラジエーターからリザーバータンクに戻って来る。追加しなくてもリザーバータンクの水位が安定するまで精製水を足していこう。今回はおよそ450mlで足りた。配管が長いとそれだけ水量も多く必要になるので、精製水は500mlのボトルを2本用意しておくと安心だろう。

追加の必要がなくなったら、洗浄のために5~10分動作させる。同時にフィッティングを触ってみて水漏れがないか確認する。ティッシュをあてがうと少しの水漏れでも見つけやすい。もし漏れるようならフィッティングの締め直しなどを行う。

精製水やクーラントを注入するには洗瓶を使うのがお薦め

精製水やクーラントを注入するには洗瓶を使うのがお薦め。PCケースの外では広くスペースを使えるが、PCケース内に収めた後はじょうご等が使いにくい場合もある。

洗浄と水漏れチェックが終わったら、精製水を捨てる。各パーツの内部に細かいごみがあった場合はここで排出される。ただ、今回はあまりなかったようで目立ったものはなかった。

PCケースの外で動作チェックするメリットの1つに、精製水を捨てやすいという点がある。PCケースに組み付けたままだと、PCケースごとひっくり返す、リザーバータンクだけを外す、洗瓶で吸い出す、配管を1ヶ所外すといった方法が考えられるが、いずれも今回ほど簡単にはいかない。配管を外す場合、つなぎ直す際に特に注意を払う必要がある。

精製水を捨てる

精製水を捨てる。各パーツ内に精製水が残らないよう、誘導するように角度を変えながら排水する。PCケースに組み付けたままだと、この工程がやりにくい。水滴が残っている程度は気にしなくてよい。

洗浄に使った精製水

洗浄に使った精製水。目立ったごみは取れなかった。ところどころ黒い点があるのは洗面器の模様だ。

改めてPCケースに組み込む

動作チェックが終わったので、本番の組み立てに入る。取り付けの手順自体は仮組みと同じだ。ヘッドを取り付ける際、忘れずにCPUグリスを塗っておこう。この後、マザーボードと電源ユニットを取り付けた状態で、再度クーラント漏れのチェックをする。

CPUにグリスを塗る

CPUにグリスを塗る。撮影のためにPCケースから外しているが、動作チェックのために外す際は、マザーボードはPCケースに付けたままでもよい。

再度PCケースに取り付け

再度PCケースに取り付け、リザーバータンクに今度はクーラントを入れる。動作チェックの時と同様に電源を入れたり切ったりして全体に行き渡らせよう。

少しの間動作させて水漏れしてないか確認する

クーラントが行き渡ったら、少しの間動作させて水漏れしてないか確認する。ここではマザーボードを経由して電源を入れているが、24pin ATX Bridge Toolを使ってもよい

水漏れがないと確認できたら、他のPCパーツを組み込んでいく。ここまで他のパーツを後回しにしたのは、万一の水漏れに備えるためだ。動作中のマザーボードにクーラントがかかった場合、どこまで影響が広がるか分からない。慎重になり過ぎるということはないだろう。

ここではマザーボードにメモリー、SSD、グラフィックボード、ラジエーターに12cmファンを2個取り付けた。ディスプレイをつないで電源を入れ、画面が映ればほぼ完成だ。

一通りのパーツを取り付けた

一通りのパーツを取り付けた。チューブに小さい気泡が残っているが、PCを使っているうちに消えていく。気になるようであればポンプを強くすると速く消える。

エア抜きを行う

これで本格水冷クーラーを使ったPCが組み上がった。基本的に組み立ては終わりなのだが、あと1つ工程が残っている。「エア抜き」だ。水冷クーラーがきちんと冷却性能を発揮するにはクーラントが行き渡っている必要がある。しかし、ポンプで循環させているだけではうまく行き渡らない場所が出てきてしまう。そこで行うのがエア抜きだ。

エア抜きの手順は2段階ある。1段階目は経路内に溜まっている空気を抜く作業だ。組み上がった直後はあちこちに空気溜まりが残っているので、PCケースを傾けたり、倒したりしてリザーバータンクに集めていく。クーラントの経路に沿って気泡が流れるようにゆっくり傾けるとよい。何度か繰り返すとリザーバータンクの水位が下がるほど空気が集まる。これで大体の空気は抜けたはずだ。

2段階目は圧力を逃がす工程だ。少し時間がかかるが、特別な作業は必要ない。リザーバータンクのクーラント補充用のふたを緩めておき、1週間ほどその状態でPCを使えばよい。水冷クーラーは動作させると水温が上がる。水温が上がると経路内の空気が熱膨張し、わずかに内圧が上がる。この圧力で樹脂製のパーツにひびが入ったり、チューブがフィッティングから外れたりする場合がある。こうしたトラブルを防ぐためだ。ふたが緩んでいるので、この間にPCを移動させたり傾けたりしないように注意しよう。エア抜きが終われば、晴れて常用環境として使えるようになる。

これで本格水冷PCは完成だが、水冷の魅力は豊富なカスタマイズ性にある。次回はもう少し発展させて、簡単にできるデコレーションを試してみる。

(文・写真=SPOOL

※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

関連記事のご紹介

関連記事の一覧を見る