製品レポート

夏を乗り切るCPUクーラーはこれだ!水冷モデル最新3製品【2019年版】

個性豊かな一体型水冷CPUクーラー3モデルをご紹介

CPUクーラーはCPUを冷やすパーツで、熱の処理の仕方で空冷と水冷の2種類がある。放熱を担当するヒートシンクを直接CPUに取り付ける空冷と、熱を受け取るヘッドと放熱するラジエーターを分離し、両者を循環する液体を使って熱を運ぶ方式の水冷だ。

水冷クーラーにも種類がある。パーツ単位で買いそろえて組み立てる「本格水冷」と、出荷時点で組み立て済みの「一体型水冷」(「簡易水冷」と呼ぶこともある)だ。ここでは一体型の方を扱う。

空冷と水冷を比べると一般的に水冷の方が冷却能力は高い。ただ、ラジエーターの取り付け場所が必要になるため、空冷と比べてPCケースの選択が重要になる。一方、空冷と比べてCPUソケット付近はすっきりしており、マザーボード上のヒートシンクと干渉する心配は少ない。

水冷クーラーを使う場合、調べるべきPCケースの仕様は搭載可能なファンの口径と数だ。ラジエーターのねじ穴はケースファンと同じ位置にあるので、口径が合えば取り付けられる。水冷クーラーの冷却能力はラジエーターのサイズに大きく影響を受けるため、高い性能が欲しい場合はPCケース選びの重要性がさらに高くなる。

一体型水冷クーラーは似た外観の製品が多いが、実は細かな違いがたくさんある。今回紹介する3製品もそれぞれ特徴があるため、参考してほしい。

RGB LED搭載の14cmファンを2個使った高性能モデル
H115i RGB PLATINUM(Corsair Components)

Corsair Components H115i RGB PLATINUM 製品画像

対応ソケット Intel:LGA2066/2011-3/2011/1366/1151/1150/1156/1155
AMD:Socket TR4/FM2/FM1/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2
搭載ファン 14cm(RGB LED搭載)×2
ファンの回転数 最大2000rpm
騒音値 最大37dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅322×奥行き137×高さ27mm

14cmファンを2個使ったモデルだ。ファンが大きい分ラジエーターも大きく、高い冷却性能が期待できる。ただ、PCケースも相応に大型のものが必要になる点は注意が必要だ。

特徴は「iCUE」という独自ソフト。細かく設定を制御できるほか、ファンの回転数や温度の管理もできる。ファンとヘッドに搭載したRGB LEDもここから設定する。同社のマウスやキーボードのLEDと連動した光らせ方もできる。

組み込みやすさにも工夫があり、ヘッドがハブとしての機能も備えている。ファンからは電源用とLED用で2本のケーブルがのびており、それだけで4本のケーブルを使うが、これらはすべてヘッドからのびているケーブルにつなぐ。ケーブルがあちこちに分散することがなく、まとめやすい。付属するUSBケーブルでヘッドとマザーボードのピンヘッダーをつなぐとiCUEを使った管理ができるようになる。

CPU接触部は銅製

CPU接触部は銅製。出荷時点ではIntel製CPU用の固定具が取り付けられていた。テスト後の撮影だったため写っていないが、出荷時は熱伝導剤が塗布されている。

ファンやラジエーター用のねじがあるため、付属品は多め

ファンやラジエーター用のねじがあるため、付属品は多め。AMDの環境では標準のリテンションを使うため、バックプレートはIntel用のみ付属している。

ラジエーターの厚さは27mm

ラジエーターの厚さは27mm。端を角張ったデザインにしているのは少し珍しい。

ファンは軸部分にLEDを4個搭載している

ファンは軸部分にLEDを4個搭載している。白い羽根が光を拡散し、ファンの内側全体に光が行き渡る。

iCUEの設定画面

iCUEの設定画面。左のメニューで操作する内容を選び、右側で設定を行う。

H115i RGB PLATINUMを取り付けたところ

H115i RGB PLATINUMを取り付けたところ。マザーボード上部のヒートシンクと干渉しないよう、PCケース上面のねじ穴の位置に注意が必要だ。

本格水冷のようなカスタマイズも可能
Celsius S24 Blackout(Fractal Design)

Fractal Design Celsius S24 Blackout 製品画像

対応ソケット Intel:LGA2066/2011-3/2011/1366/1151/1150/1156/1155
AMD:Socket TR4/FM2/FM2+/FM1/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2
搭載ファン 12cm×2
ファンの回転数 1950~3150rpm
騒音値 最大32.2dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅284×奥行き122×高さ31mm

Celsius S24 Blackoutは取り付けのしやすさが特徴の一体型水冷クーラー。ラジエーターにファン用電源のハブを備えており、ヘッドからのファン用端子をマザーボードにつなぐだけで配線が終わる。LEDの装飾もなく、機能性を重視する人に向いている。本製品は「Celsius S24」のバリエーションモデルで、ファンの羽根が白から黒に変更されている。白と黒のツートンカラーか、黒一色かを選べるようになった。

ヘッドのカバーが動作モードを変更するスイッチになっており、オートモードとPWMモードが選べる。オートモードは温度に応じて自動的にポンプとファンの回転数を変更する。PWMモードはマザーボード側の設定を使うため、ユーザーの考えを反映させやすくなる。

もう一つ大きな特徴が、チューブの接合部にG1/4インチという規格のパーツを使っていることだ。本格水冷のパーツで使われている規格のため、一体型では珍しくカスタマイズが可能となっている。ただしチューブを外してしまうとメーカー保証がなくなってしまうため、上級者向けの機能と言える。

CPU接触部は円形の銅製プレート

CPU接触部は円形の銅製プレート。中央に熱伝導剤が塗布されている。固定用の金具は少し回転させるだけで簡単に外せる。

本製品もAMDの環境では標準のリテンションを使う

本製品もAMDの環境では標準のリテンションを使うため、バックプレートはIntel環境のみ付属している。写真左下の長方形のパーツはケーブルホルダーだ。

ラジエーターの厚さは31mmと他の2製品よりもわずかに厚い

ラジエーターの厚さは31mmと他の2製品よりもわずかに厚い。端は丸みを帯びた標準的なデザインだ。

ファン用端子のハブ

ファン用端子のハブ。1本はチューブのスリーブ内を通ってヘッドにつながっている。

Celsius S24 Blackoutを取り付けたところ

Celsius S24 Blackoutを取り付けたところ。マザーボードにつなぐケーブルが1本だけなので、CPU付近をすっきりさせられる。

2種類の方法でLEDライトを設定
Water 3.0 240 ARGB Sync(Thermaltake Technology)

Thermaltake Technology Water 3.0 240 ARGB Sync 製品画像

対応ソケット Intel:LGA2066/2011-3/2011/1366/1151/1150/1156/1155
AMD:Socket TR4/FM2/FM1/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2
搭載ファン 12cm(RGB LED搭載)×2
ファンの回転数 500~1500rpm
騒音値 最大25.8dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅270×奥行き120×高さ27mm

9個のLEDを内蔵した12cmファンを2個搭載する一体型水冷クーラー。ヘッドにもRGB LEDを搭載し、LEDの制御方法を2種類から選べるのが特徴だ。マザーボードが備えるRGB LED制御機能か、付属のLEDコントローラーで制御する。ファンの回転数制御はマザーボードの機能を使う。

LED制御のケーブルをつなぎ合わせてマザーボードか専用コントローラーにつなぐことになるため、ケーブルがかなり長くなってしまう。裏面配線の余裕があるPCケースで使うのが良いだろう。ファンとポンプでファン用電源端子を3個使うが、分岐ケーブルが付属しているためマザーボードの端子の空きが少なくても心配は無用だ。

CPU接触面は他の製品と同じように銅製

CPU接触面は他の製品と同じように銅製で、熱伝導剤が塗布されている。留め具は金具と樹脂製のリングでヘッド部周辺の突起をはさむタイプだ。

ケーブルの付属品が多い

ケーブルの付属品が多い。かなり余裕をもった長さがあるため、取り回せなくて困るということはあまりないだろう。リテンションのパーツは他のモデルとほぼ同じだ。

ラジエーターの厚さは27mm

ラジエーターの厚さは27mm。標準的なデザインだ。

白い羽根がLEDの光をファン内部全体に広げる

白い羽根がLEDの光をファン内部全体に広げる。LEDの数が多く、グラデーションが綺麗だ。

Water 3.0 240 ARGB Syncを取り付けたところ

Water 3.0 240 ARGB Syncを取り付けたところ。ケーブルが長く、多いのが悩みどころだが、裏面配線できれば表側はすっきりさせられる。

冷却性能と静音性をテスト

やはり一体型水冷クーラーなら冷却性能が気になるところだ。さっそくテストしていこう。テスト環境は以下の表の通りだ。参考用に、AMD Ryzen 7 2700Xの付属CPUクーラーの結果も掲載している。CPUの温度は室温やPCケース内のエアフローなどでも変化するため、テスト結果はあくまで参考値としてとらえてほしい。

CPU AMD Ryzen 7 2700X
メモリー DDR4-2400 4GB×2
マザーボード ASRock X470 TAICHI
SSD Micron Technology 1100 250GB
グラフィックボード MSI GeForce GTX 1060 GAMING X 3G
PCケース Thermaltake Technology VIEW 31 TG
電源ユニット Thermaltake Technology TOUGHPOWER GRAND RGB 650W
OS Windows 10 Home(May 2019 Update) 64ビット

室温は27~28度。CPUの負荷には「OCCT 5.3.1」の「CPU:OCCT」を使用し、約10分間実行した時点のCPU温度を採用した。CPU温度は「HWMonitor 1.40」の「Package」の値。PCケースのファンは背面のみ動作させた。騒音値の計測は、側面パネルを開けてCPUクーラーから20cmの位置に佐藤商事の騒音計「SD-23SD」を置いて計測した。この時ケースファンは全て停止させた。暗騒音は30.8dB(A)。マザーボードのUEFIのファン動作モードは標準の「Standard Mode」を使用している。

冷却性能

★★★H115i RGB PLATINUM

★★Celsius S24 Blackout

★★Water 3.0 240 ARGB Sync

冷却性能グラフ

いずれもファンを2個搭載した一体型水冷クーラーだけあり、CPU付属クーラーよりも負荷時のCPU温度を大きく下げられた。ファンの動作モードを変更できるモデルでは、回転数を落とす設定にしてもなおCPU付属クーラーよりも冷えている。一方、アイドル時の温度はむしろわずかに上がっているモデルもあった。ファンの回転数を下げると顕著に上がったが、アイドル時に熱くなって困ることはまずないため、それほど重視する必要はないだろう。

負荷時に最もCPU温度を抑えられたのはH115i RGB PLATINUMの設定を「強い」にした場合だ。ファンの回転数は公称値の2000rpm付近まで上がり、CPU付属クーラーより20度近くも下げられた。ただし、後述のように騒音値も高めだ。「静か」の設定ではCPU温度は8度上がったものの、耳をすまさないと聞こえないほど静かになった。

Celsius S24 Blackoutはオートモードの方が静かに動作した。CPU温度に応じて自動的にポンプとファンの回転数を上げるため、70度に達しない程度ではあまり上がらなかったようだ。CPU温度は高めだったが、代わりに動作音は極めて静かだった。

Water 3.0 240 ARGB Syncは両製品の静音動作時の中間といったところ。マザーボードのPWM機能を使ったが、ファンの回転数は1150~1200rpm辺りまでしか上がらず、まだ余力がありそうだった。

騒音値

★★★H115i RGB PLATINUM

★★★Celsius S24 Blackout

★★Water 3.0 240 ARGB Sync

騒音値グラフ

静音性は冷却性能とトレードオフになる部分が多い。特に一体型水冷クーラーはファンの風が当たる面積が大きいため、風量を上げると性能も上がりやすい。冷却性能を重視すると必然的に騒音値も上がる。最も騒音値が高かったのは、冷却性能も高かったH115i RGB PLATINUMとなった。ただし、「静か」の設定では負荷時でも35dB(A)を切っており、ほぼ無音になった。中間の設定もあり、ユーザーの好みでバランスを取れるのはこのモデルの強みだろう。

最も静かだったのはCelsius S24 Blackoutのオートモードで、こちらも動作音はほぼ聞こえなかった。PWMモードはファンの回転数の変動が少なく、アイドル時と負荷時でほぼ同じ騒音となった。それでもCPU付属クーラーよりも若干騒音値は低い。

Water 3.0 240 ARGB Syncは騒音値でも中間辺りだった。突出したところはないが、十分な性能を備えていると言える。

やはり高い冷却性能が魅力

一体型水冷CPUクーラーは、基本的な冷却性能の高さが魅力だ。同じ製品で冷却重視でも静音重視でも対応できる。今回のテストではできるだけ製品の機能を使用したが、ファンの電源ケーブルをマザーボードに直接つなげばより設定に介入しやすくなる。

ファンを並べて取り付けるためLEDイルミネーションとも相性が良く、手軽にPCケース内をデコレーションできる。ぜひこの夏、挑戦してみてほしい。

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(文・写真=SPOOL

※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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