警備業界では、少子高齢化による人手不足や厳しい労働環境が大きな課題となっており、業界全体の効率化が求められています。
そんな中、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入によって、業務の効率化や離職率の低下を目指す動きが加速してきました。
本記事では、スマートグラスをはじめとする最新技術を活用した警備業界のDX解決策や具体的な事例をご紹介します。
警備業務の未来を変える革新的なアプローチについて知りたい方はぜひご覧ください。
警備業界の課題とは?
現在、多くの日本企業が人手不足に悩まされており、特に警備業界は課題が山積みです。
AIなどの最先端技術の導入の必要性が強く叫ばれており、「2025年の崖」も近づいている中、さらに問題が深刻化しつつあります。
ここではまず、警備業界が抱える課題を解説します。
①少子高齢化による深刻な人手不足
警備業界では、少子高齢化による労働力の減少が大きな課題となっています。
日本全体で高齢化が進む中、警備業界も例外ではなく、特に若年層の雇用が進まずに多くの現場で人手不足が慢性化しています。警備業は長時間労働や体力的負担が大きいため、特に若者にとって魅力が少なく、他業種と比較して人気が低いのが現状です。
さらに、警備員の中でも高齢者の割合が高くなっており、60歳以上の警備員が約30%を占めています。
若者が少なく、高齢者が主要な労働力となっている現状では、今後さらに退職者が増えることが予想されており、若年層の育成が進まないと、より深刻な人手不足に直面する可能性が高いです。
②労働環境の厳しさから離職率が高い
警備業界の離職率が高い要因の一つは、厳しい労働環境です。
2021年度のデータによると、警備業界の平均勤続年数は約9.5年とされており、その他の業界と比較しても極めて低い水準です。
警備員は夜勤や長時間の立ち仕事が多く、特に野外での警備では夏の暑さや冬の寒さといった厳しい気象条件にもさらされます。また、警備の対象物が高価だったり危険な現場に配属されたりすると、精神的なプレッシャーも大きくなります。
これに加え、警備員の仕事内容は単調でスキルアップの機会が限られていることも、やりがいの不足やキャリアパスの不透明さにつながり、離職を促進する要因となっています。
③給与水準が低い
警備業界の給与水準は他業種と比較して低いのが現状です。
厚生労働省が提供しているデータによると、警備員の平均年収は約376万円とされています。
施設警備員の場合も年収は約376万円、雑踏・交通誘導警備員では約350万円であり、他の職種と比べると低水準です。
(参考:職業情報提供サイト jobtag、職業情報提供サイト jobtag)
このような低賃金の背景には、警備業務自体が比較的単調であり成果が見えにくいという性質が影響しています。また、業界全体で価格競争が激化していることも、警備員の賃金水準を引き下げる要因の一つです。
さらに、警備業界ではキャリアアップが難しく、資格取得やキャリアパスは存在するものの、実際には資格を取得しても給与に大きな差が出ない場合が多いとされています。
④DXが進んでいない
警備業界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が遅れていることが深刻な課題となっています。
多くの企業で従来の人力に依存した警備体制が続いており、AIやロボット、センサーなどの先端技術を十分に活用できていない状況です。
一部では、AIやロボットを使った監視や警備が試験的に導入されていますが、全体の普及には至っていません。例えば、AIを活用した「AI警備」や「ドローン警備」などの技術は、監視や巡回業務の効率化に寄与し、24時間稼働できる体制を整えることができます。
しかし、導入コストの高さや技術的な制約、既存の労働力との調和が課題として残っています。DXを進めることで人手不足の緩和や、労働環境の改善、業務効率の向上が期待されていますが、業界全体としてはまだ遅れが見られるため、今後のさらなる取り組みが求められている状況です。
警備業界のDX活用事例3選
ここからは、具体的な警備業界のDX活用事例をいくつか見ていきましょう。
今回ご紹介するのは以下の3つのDX事例です。
- 遠隔作業支援サービス「Optimal Second Sight」
- 自律走行ロボット「ugo」
- 異常発生を自動通報「設備レスキュー」
①遠隔作業支援サービス「Optimal Second Sight」 | 株式会社オプティム
「Optimal Second Sight」は、株式会社オプティムが提供する遠隔作業支援サービスで、警備業務や災害現場での作業をリモートで支援します。
Optimal Second Sightの特徴は以下の通りです。
- リアルタイム映像共有:スマートグラスやスマートフォンを通じて、現場の状況をリアルタイムで指示者に送信
- 赤ペン機能:指示者が映像上に直接マークを付けて、具体的な指示を出すことが可能
- 指差し機能:重要なポイントや注意箇所を映像上で指し示すことで、視覚的な指示が可能
- 双方向コミュニケーション:作業者と指示者が双方向でコミュニケーションを取りながら作業を進められる
「Optimal Second Sight」は、リアルタイムで現場の映像を本部に共有できるため、現場にいなくても即座に状況を把握し、適切な指示をだせるようになります。これにより、警備業務の効率が大幅に向上し、現場での迅速な対応が可能になるでしょう。
②自律走行ロボット「ugo」 | NTT東日本
NTT東日本の自律走行ロボット「ugo」は、警備業務のDXを推進するための最新警備ロボットです。
ugoの特徴は以下の通りです。
- 自律走行機能:施設内を自律的に巡回する機能を備えており、従業員が行う巡回・点検業務の一部を代替することで業務効率化を実現する。
- AIとの連携:AI警備システム「AI Security asilla」と連携し、監視カメラで異常行動を検知した場合にロボットを現場に派遣し、初動対応を行える。
- クラウド管理と拡張性:「ugo Portal」というクラウドアプリケーションを通じて、複数台のロボットを一元管理し、ノーコードで業務フローや自動化プログラムを作成できる。
ugoを導入することで警備業務の効率化、省人化、安全性の向上が期待されており、今後さまざまな施設での導入が進むでしょう。
③異常発生を自動通報「設備レスキュー」 | ALSOK
ALSOKの「設備レスキュー」は、ビルや施設の設備においてトラブルが発生した際に、24時間365日体制で対応する遠隔作業支援サービスです。警備員が現地に駆けつけ、設備専門家と連携して映像通話を通じた指示を受けながら応急処置や原因究明を行います。
ALSOKの設備レスキューの特徴は以下の通りです。
- リアルタイム映像通話:現場の警備員が映像通話を通じて、遠隔地にいる専門家とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら作業を進行
- 3者通話機能:警備員、設備専門家、お客様(または指定された担当者)の3者で通話を行い、現場の状況を迅速に共有
- 画像付き報告書:トラブル対応後、最大12枚の画像を添付した詳細な報告書を提出し、作業内容を可視化
「設備レスキュー」は、警備業務における現場対応の迅速化を実現し、設備管理のコストと労力を大幅に削減します。
従来、現場に専門家を派遣する必要があった設備トラブルも、遠隔からの専門家による支援が可能となり、警備員がその場で応急処置を実施できるため、問題の早期解決と業務効率化が実現可能です。
警備業務にスマートグラスを導入するメリット5つ
少子高齢化に歯止めがかからない日本にとって、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進はもはや宿命といえるかもしれません。特に警備業界は人材不足が深刻な業界の一つであり、早急なDX改革が求められます。
しかし、「DXを推進しようにも、どこから手をつければよいのかわからない!」という方も多いのではないでしょうか?
そこでおすすめなのが「スマートグラス」です。
現在すでに多くの警備業務でスマートグラスが実用化されており、導入することで多くの課題を解決できます。ここでは、警備業務におけるスマートグラスの導入メリットを5つ厳選してご紹介します。
関連記事:スマートグラスとは?できること・ARグラスとの違い・活用事例5選とおすすめデバイスを紹介!
①即時対応力の向上
1つ目のメリットは、即時対応力の向上です。
従来の警備業務では、緊急事態やトラブル発生時に現場から本部に状況を報告し、本部が指示を出すまでにタイムラグが発生することが多くありました。
報告が電話や無線を通じた音声のみだと、現場の状況が正確に伝わらないケースもあり、特に広範囲を監視する際には担当者の負担が増大し、迅速な対応が難しかったのです。
しかし、スマートグラスの導入により、現場と本部がリアルタイムで映像と音声を共有できるため、緊急事態に対する即時対応が可能になります。本部スタッフは現場の映像を見ながら具体的な指示を出せるため、警備員の動きも正確かつスピーディーです。
ただし、導入の際は高解像度かつ低遅延の通信機能を備えたスマートグラスを選択し、安定した通信環境を整備しなければなりません。
②顔認証によるセキュリティ強化
2つ目のメリットは、顔認証によるセキュリティ強化です。
従来の警備業務では、施設への入退場管理にカードキーやIDカードなどを使用していましたが、紛失や盗難、なりすましのリスクに常にさらされていました。また、カメラを設置できない場所での認証手段が限られていることも課題の一つでした。
しかし、スマートグラスに顔認証機能を組み込むことで、警備員がリアルタイムで人物を特定・認証し、入退室の管理ができます。スマートグラスのカメラを通じて、カメラの設置が困難な場所でも個人を確認できるため、不正侵入を防止し、セキュリティ精度を大幅に向上可能です。
なお、導入時には高精度の顔認証ソフトウェアとクラウド連携機能を備えたスマートグラス(例:Vuzix M400スマートグラス)を選ぶと、管理と運用がスムーズです。
③移動コスト・時間の削減
3つ目のメリットは、移動コストと時間の削減です。
従来の警備では、担当者が複数の現場を直接訪れ、現地の状況確認や指示を出す必要がありました。このため、遠隔地への移動には時間とコストがかかり、業務効率の低下していました。
しかし、スマートグラスを利用すれば、リアルタイムで映像を通して状況確認や指示が可能になり、現場に出向く必要がありません。これにより、移動にかかる時間と経費が大幅に削減され、効率的に複数の現場を管理できるようになります。
④人材育成と技術継承の支援
4つ目のメリットは、人材育成と技術継承の支援ができるようになることです。
警備業務では、熟練者のスキルを新人に伝える必要がありますが、これまでは現場で直接指導することが一般的でした。そのため、新人が現場に慣れるのに時間がかかってしまい、その間に別業界へ転職してしまうというケースが頻発していました。
しかし、スマートグラスを使用すれば、遠隔地からベテラン警備員がリアルタイムで新人に指導を行うことができるため、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が効果的に行えます。これにより、スキル習得の速度が向上し、新人が独立して現場対応できるようになります。
⑤記録・データの一元管理
5つ目のメリットは、遠隔作業支援による記録・データの一元管理です。
従来の警備業務では、トラブルや業務内容の記録を紙ベースで管理することが一般的で、報告内容の精度が低くなることや、膨大な記録の中から情報をすぐに見つけられない点が課題の一つでした。
また、現場で発生する問題については、後日検証する際に客観的な記録が残っていないことが多く、対応の正確さや透明性に欠けるといった面もありました。
しかし、スマートグラスを活用した遠隔作業支援では、現場で行われている作業やトラブル対応の様子をリアルタイムで記録し、クラウド上で一元的に管理できます。これにより、警備員の行動や対応プロセスが映像と音声で記録され、トラブル発生時や後日の検証で活用できるデータが確保されます。
さらに、データは本部や他の関係者と共有されるため、複数の視点で状況を把握し、必要に応じて支援できるのも大きな利点です。
スマートグラスは「Vuzix社」がおすすめ!
近年ではスマートグラスの進化が著しく、警備業界のみならず製造業や医療業界でも多くのスマートグラスが導入されています。しかし、スマートグラスメーカーは大小あわせると非常に数が多く、どのメーカーの製品が自社にあっているのか迷っている方も多いでしょう。
そこでおすすめなのが「Vuzix(ビュージックス)社」のスマートグラスです。
Vuzix社は法人、医療、防衛、消費者市場向けのスマートグラス、拡張現実(AR)技術や製品の設計、製造、販売のリーディングカンパニーになります。元々は米軍向けに開発していた経緯もあり、機能面における信頼性は折り紙つきです。
「Vuzix社」のスマートグラスのラインナップは以下の通りです。
M400スマートグラス
Vuzix社の「M400スマートグラス」は、遠隔作業支援などに最適なデバイスです。
有機ELディスプレイ
16.8度の視野角を持つ有機ELディスプレイを採用し、鮮やかな色彩と高コントラストで情報を視界に表示します。暗い場所や明るい環境下でも高い視認性を提供します。
Android OS搭載
Vuzix M400はAndroid 8.1または11のOSが搭載され、業務用アプリケーションの開発・カスタマイズが可能です。また、さまざまなアプリを通じて効率的なワークフロー支援を実現します。
遠隔作業支援に最適
高性能なQualcomm XR1プロセッサや12.8メガピクセルのカメラ、ハンズフリー操作が可能な音声コントロールにより、リモートでのサポートや監視に最適です。現場の状況をリアルタイムで共有できるため、効率的で正確な対応が可能です。
M400スマートグラスの製品情報はこちらのリンクからご確認ください。
Blade 2スマートグラス
Blade 2スマートグラスは、Vuzix社のスマートグラスの中でもエンタープライズモデルに位置します。
さらに強力なプロセッサと互換性
Qualcommのクアッドコアプロセッサが搭載されており、全体的な処理速度が向上しています。最新のAndroid 11が動作するため、Microsoft TeamsやZoomなど、企業向けのアプリケーションと簡単に統合が可能です。
強化された接続機能
Blade 2は5GHzおよび2.4GHzのWi-FiとBluetoothに対応しており、接続性が向上しています。リアルタイムでのデータ共有やリモートサポートがよりスムーズに行えるため、現場での効率的な作業が可能です。
最高性能カメラとオーディオ
8メガピクセルのオートフォーカスHDカメラと、ノイズキャンセリングマイクを搭載したステレオスピーカーが内蔵されており、警備員が現場の映像を録画し、クリアな音声で通信できる環境を提供します。
Blade2スマートグラスの製品情報はこちらのリンクよりご確認ください。
警備業界のDX支援はアスクにお任せ!
警備業界が抱える人手不足や労働環境の課題は、DXの活用を通じて解決の糸口が見えてきました。
ロボットやスマートグラス、顔認証システム、ドローン、クラウドベースの管理システムなど、最新技術の導入によって、業務の効率化や負担軽減が可能です。
特にスマートグラスは、遠隔支援やリアルタイムの情報共有において大きな役割を果たしています。技術の進化に伴い、業界全体が新しいステージへと移行し、警備のあり方も今後大きく変わるでしょう。
なお、株式会社アスクは「Vuzix社」の国内正規代理店として、スマートグラスの導入を支援しています。
警備業界だけでなく、個々のニーズに応じたDX支援サービスも展開しておりますので、こちらのリンクからぜひ一度ご相談ください。
監修者:麻生哲
明治大学理工学部物理学科を卒業後、ITベンチャーにて多数のプロジェクトを成功に導く。子会社を立ち上げる際には責任者として一から会社を作り上げ、1年で年商1億円規模の会社へと成長させることに成功。現在は経験を活かし、フリーランスとしてコンテンツ制作・WEBデザイン・システム構築などをAIやRPAツールを活用して活動中。
株式会社アスクでは、最新のPCパーツや周辺機器など魅力的な製品を数多く取り扱っています。
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