協働ロボットは、産業の自動化において急速に注目を集めている技術です。
これまでの産業用ロボットとは異なり、協働ロボットは人と同じ作業空間で安全に働くことができ、労働力不足や作業の効率化を実現します。
本記事では、協働ロボットとは何か、その特徴や産業用ロボットとの違い、さらには実際の活用事例について詳しく解説します。
シミュレーションや周辺機器に関する詳細な解説も含め、ロボットの効率的な運用に役立つポイントを網羅しているので、ぜひ最後までお読みください。
目次
協働ロボット(Collaborative Robot)とは?
1960年代の高度経済成長を下支えした日本のロボット産業。
現在でも日本の産業用ロボットは世界でも高く評価されており、ロボットの稼働数は世界で2位を誇ります。
しかし、近年のロボット技術はさらに進化しており、現在では「協働ロボット(collaborative robot)」の活躍が目覚ましいです。
協働ロボットとは、人と同じ作業空間で安全に作業を行うことができる産業用ロボットです。従来の産業用ロボットは、安全性のために人と隔離されて使われることが一般的でしたが、協働ロボットはセンサーや制御機能によって、人との接触時に自動的に動作を停止するなど、安全機能を備えています。
そのため、安全柵が不要で、人とロボットが協力して作業できることが特徴です。
自動車や電子機器の組み立て、食品製造などさまざまな産業で利用されており、人手不足の解消や作業効率の向上に貢献しています。また、簡単なプログラム変更やティーチング機能によって、専門知識がなくても操作しやすい設計となっている点も特徴です。
このように、協働ロボットは製造業やサービス業など、多様な分野での導入が進んでおり、人材不足が深刻な社会問題となっている日本にとって非常に重要な技術の一つといえます。
産業用ロボットとの違い
協働ロボットは、一見すると産業用ロボットとあまり違いがないように思えます。しかし、協働ロボットと産業用ロボットには明確な違いが存在します。
協働ロボットと産業用ロボットの違い
ロボットの種類 | 協働ロボット | 産業用ロボット |
---|---|---|
人との協働 | 人と同じ空間で安全に作業可能。接触時に自動停止 | 人と隔離して作業する。柵や隔離が必要 |
安全性 | 安全センサーや動作制御を装備し、安全に人と作業 | 高速で強力な動作を行うため、人と同じ空間での使用は危険 |
操作のしやすさ | 直感的に操作可能で、簡単なプログラム変更ができる | 高度なプログラミングスキルが必要で、専任の技術者が必要 |
可搬重量と速度 | 可搬重量が軽く、動作速度も安全性を考慮して低速 | 高い可搬重量と高速動作が可能で、大量生産に適している |
設置の柔軟性 | 省スペースに設置可能で、柔軟に運用可能 | 設置には広いスペースと安全柵が必要 |
用途 | 多品種少量生産や変種変量が求められる現場で有効 | 大量生産や高精度な作業に特化 |
コスト | 比較的低コストで導入可能 | 導入コストが高く、維持費もかかる |
このように、協働ロボットは産業用ロボットよりも専門知識が必要ない点や操作のしやすさが特徴であり、比較的導入が容易なため、民間や中小企業にも適しています。
今までは、産業用ロボットというとある程度の規模以上の大企業でないと導入が難しかったのですが、協働ロボットの登場でロボットがより身近になったといえるでしょう。
四足歩行ロボットの開発事例が増えつつある
近年、協働ロボットの中でも特に四足歩行ロボットの開発が注目されています。
四足歩行ロボットは、従来の車輪やキャタピラ移動型ロボットでは難しい悪路や階段、凹凸のある地形での動作が可能です。
特に建設現場や災害対応といった過酷な環境では、これらのロボットが安全に作業を行うことで、人間の労働力不足や危険を軽減できるため導入が加速しています。
例えば、中国のUnitree Robotics社によって開発された「A1」という四足歩行ロボットは、低価格でありながら高性能な移動能力を備え、最大3.3m/sの速度で走行可能です。また、深度カメラや多種のセンサーを搭載し、自律的な障害物回避や対象追跡が簡単にできてしまいます。
A1は特に研究開発や産業点検、エンターテインメントの分野で活用されており、協働ロボットとして多様な用途に応じた柔軟なカスタマイズができる点も大きな強みです。
A1以外にも、アメリカ・日本・欧州でも四足歩行ロボットの開発事例は近年急激に増加しており、技術の進化に伴って価格が下がる一方で、性能や適応力は向上していくため、建設、医療、災害対応などさまざまな分野での導入が進むでしょう。
協働ロボットが導入されるようになった理由5つ
2024年に矢野経済研究所が発表したデータによると、協働ロボットの市場規模は2024年には9万台だったのに対し、10年後の2033年には約68万台規模への拡大が見込まれています。
(参考:2024年版 協働ロボット市場の現状と将来展望|矢野経済研究所)
このことからも分かるように、現在急速に協働ロボットの導入が世界的に進んでいる状況です。
ではなぜ、協働ロボットは急速に導入されるようになったのでしょうか?
結論からいうと、以下の5点が主な理由です。
- 深刻な労働力不足と少子高齢化が進行
- 急務となっている労働環境の改善
- 規制緩和
- センサーやAI(人工知能)の飛躍的な進化
- コストパフォーマンスの重視
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
①深刻な労働力不足と少子高齢化が進行
協働ロボットが導入される大きな理由の一つは、労働力不足と少子高齢化が進行していることです。
特に日本をはじめとする先進国では労働人口の減少が顕著で、製造業やサービス業など幅広い分野で人手不足が問題視されています。つまり、少子高齢化により現場で働く若年層の人材が減少し、高齢化が進む中で、肉体的に負担の大きい作業を担うことが難しくなっているのです。
特に製造業では、簡単な組み立てや搬送、検査業務などで協働ロボットが多く導入され、少ない人手で生産性を維持・向上させるのが急務とされています。
このように、協働ロボットはこれまで人が担当していた業務を代替し、作業者の負担を軽減するだけでなく、労働力不足の問題解決にも寄与することが可能です。
②急務となっている労働環境の改善
労働環境の改善も協働ロボット導入が進んでいる理由の一つです。
多くの現場では、従業員が過酷な環境下で作業することが常態化しており、特に製造業では長時間労働や重労働、危険を伴う作業が課題となっています。
協働ロボットは、このような状況を解消するために非常に重要です。例えば、重労働や危険作業を協働ロボットが担うことで、従業員はより安全で快適な環境で働けるようになります。これにより、怪我や事故のリスクが減少し、作業者の精神的・肉体的負担が軽減されます。
また、ロボットが単調で繰り返しの作業を自動化することで、従業員はより価値の高い創造的な業務に集中できるようになる点も付加価値の一つです。労働環境の改善は従業員のモチベーション向上にもつながり、結果として企業全体の生産性や品質向上にも貢献します。
このような背景から、労働環境の改善を目的とした協働ロボットの導入が急速に進んでいるのです。
③規制緩和
協働ロボットの導入が加速した背景には、規制の緩和も大きく影響しています。特に2013年に行われた法改正が転機となりました。
以前は「80W以上の産業用ロボット」には安全柵が必要とされており、人との共存が難しい状況でした。
しかしこの規制が緩和されて、ISO 10218やISO/TS 15066といった国際的な安全基準を満たせば、安全柵なしでも協働ロボットを使用できるようになったのです。
この規制緩和によって、人間が直接作業している空間に協働ロボットを導入することが可能になり、スペースが限られた中小企業でも、容易に導入が進められるようになりました。
また、ロボットの安全性技術も進化してより安全な協働作業が可能になったことで、協働ロボットの普及が急速に広がっています。
④センサーやAI(人工知能)の飛躍的な進化
協働ロボットの普及が加速したもう一つの理由は、センサー技術やAI(人工知能)の飛躍的な進化です。
最新の協働ロボットは、複数の高度なセンサーやカメラ、AIアルゴリズムを駆使して、人や周囲の物体との接触や衝突を避けつつ、安全に作業を行うことが可能です。
これにより、従来の産業ロボットよりもはるかに精密で柔軟な動作が実現しています。例えば、深度センサーや力覚センサーを活用することで、ロボットが力をかけすぎないように調整したり、異常を検知して自動的に動作を停止させたりすることが可能です。
加えて、AI技術の進化により、協働ロボットは複雑な作業や状況に柔軟に対応できるようになっています。AIはロボットの動作パターンを学習し、時間とともにより効率的に作業を行えるようになります。
これにより、製造業だけでなく、サービス業や医療分野など、より広範な業界での協働ロボットの導入が進んでいるのです。
⑤コストパフォーマンスの重視
協働ロボットが導入される理由の一つとして、コストパフォーマンスの向上が挙げられます。従来の産業用ロボットは高価で、導入には非常に高額な初期投資が必要でした。
しかし、近年では技術の進歩により協働ロボットの価格が下がり、さらに長期的な運用コストの削減が期待できるようになっています。
協働ロボットは、人手不足を補うだけでなく24時間稼働が可能なため、従業員の労働時間に依存せず、人件費削減に大きく寄与します。これにより、初期投資が高くても数年で投資を回収できるケースが増えました。
さらに、ロボットの保守やメンテナンスのコストも改善されてきており、全体的な運用コストが抑えられることから、多くの企業がコストパフォーマンスの観点で導入を決定しています。
以上の理由から、協働ロボットは多くの企業で経済的な選択肢として注目され、導入が急速に進んでいるのです。
協働ロボットの導入によるメリット4つ
では、協働ロボットを導入するメリットは何なのでしょうか?結論からいうと、以下の4点が主な理由です。
- 省スペースに導入できる
- 柔軟性が高くカスタマイズも容易
- 高い費用対効果
- 人材育成にも貢献
それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
①省スペースに導入できること
2013年の労働安全衛生規則の規制緩和により、80W以上の出力を持つロボットでも安全基準を満たす場合には、安全柵なしで人間と共存して作業できるようになりました。
これにより、協働ロボットは従来の産業用ロボットと異なり、広いスペースを必要とせず、工場や作業場に省スペースで導入できるようになっています。
ただし、その際には国際規格である「ISO/TS 15066」を遵守しなければなりません。
ISO/TS 15066では、人とロボットの協働作業における安全基準を詳細に定めており、特にロボットの動力や速度の制限、作業者との距離の監視が重要な要素となっています。
この基準を満たすことで、協働ロボットは限られた空間でも安全に設置・運用でき、企業は省スペースかつ効率的な作業環境を構築できます。
②柔軟性が高くカスタマイズも容易
協働ロボットは従来の産業用ロボットと比較して、非常に柔軟な設計が特徴です。例えば、ピッキング、組み立て、検査といった異なる作業を簡単にプログラムできるため、さまざまな業務に適応可能です。
特に、生産ラインにおける細かな調整や異なる製品の取り扱いにも対応できる点が、従来の産業用ロボットとは異なります。
また、「ダイレクトティーチング機能」により、ロボットのアームなどを直接操作して動きを教えることができるため、特別なプログラミング知識がなくても現場の作業者が設定を変更できます。
従来の産業用ロボットは非常に高度なプログラミング知識が必要だったことを考えると、この点は非常に大きなメリットといえるでしょう。
③高い費用対効果
企業が協働ロボットを導入する大きなメリットの一つは、従来の産業用ロボットと比較して費用対効果が高いという点です。
協働ロボットは、1台あたりの価格が100万円~500万円程度と、産業用ロボットに比べて初期投資が低いです。
産業用ロボットは本体だけで500万円以上かかる場合が多く、安全柵や周辺機器、システムインテグレーション費用を含めると、総額は1000万円~数千万円にもなることがあります。
また、協働ロボットは多品種少量生産に対応できるため、異なる業務や製品への迅速な切り替えが可能です。従来の産業用ロボットは特定の作業に最適化されているため、用途が限定されることが多くありました。しかし、協働ロボットはプログラムの変更や設定の調整が簡単であり、さまざまな業務に対応できる点も魅力の一つです。
④人材育成にも貢献
協働ロボットは従業員のスキル向上や、新たな技術の習得に大きく寄与するため、企業の成長に不可欠な人材育成にも利用可能です。
先述したように、協働ロボットは簡単に操作できるダイレクトティーチング機能を備えているため、専門知識がなくても操作を学べます。これにより、従業員は現場で直接ロボットを操作しながら関連業務を効率よく習得できます。
また、協働ロボットは柔軟に異なる業務に対応できるため、今までよりも広い範囲の業務を短時間かつ正確に学ぶことも可能です。
加えて、従業員の肉体的負担が軽減されることで、より高度な業務やクリエイティブな作業に集中でき、企業全体の生産性向上にもつながるのです。
深刻な人材不足に悩む日本企業にとって、これは非常に大きなメリットといえるでしょう。
協働ロボット以外の主な産業用ロボット3つ
確かに、協働ロボットはコストパフォーマンスがよく、導入も従来の産業用ロボットよりは簡単です。
しかし、すべてのケースで協働ロボットが活躍できるわけではありません。そのため、業種・業界に応じて協働ロボットと産業用ロボットを使い分ける必要があります。
特に、以下の3つの産業用ロボットの需要は常に高いので、ロボットを業務に導入する際は検討してみてください。
①ロボットアーム
ロボットアームは、もっとも代表的な産業用ロボットの一つで、工場や製造ラインで広く使用されています。
機械的な「腕」の形をしており、人間の腕のように多関節で構成されているため、さまざまな動きや作業を行うことが可能です。しかし、近年ではこういった従来型のロボットアームではなく、協働ロボットとしてのロボットアームの活躍が目覚ましいです。
協働ロボットアームは、人が周囲にいる際には万一の事故にも備えられるように低速で稼働します。仮に人と接触した場合でもすぐに稼働停止できるので、厚生労働省の定める安全柵の設置が必要ありません。もちろん、人が周囲にいない場合では従来型に近い性能で稼働できるので、コストパフォーマンスも非常に高いです。
ロボットアーム(協働型)の主な活躍シーン
- 共同組立作業(人とロボットが同じ空間で作業分担を行える)
- 柔軟なパッケージング・検査(小ロットやカスタマイズ製品に対応し、人と共同で作業可能)
- 狭いスペースでの作業(安全柵なしで設置でき、限られた空間で稼働できる)
- 持ち替え・手渡し作業(人から製品を受け取り、次の工程へ手渡し可能)
- リアルタイムな調整(作業中に人の指示に応じて動作を調整できる)
安全柵が要らず、省スペースでの作業も可能なので、人間とロボットの長所を活かした相乗効果が狙えます。
②自律移動ロボット(AMR)
自律移動ロボット(AMR(Autonomous Mobile Robot)は、製造業や物流業界で利用される産業用ロボットの一つです。
AMRは、カメラ、LiDAR(レーザーセンサー)、AIを活用して周囲の環境をリアルタイムで認識し、最適な経路を自ら判断します。
自動誘導者(AGV(Automated Guided Vehicle)とは異なり、決められたラインやマーカーに依存せず、障害物や人間を避けながら動けます。そのため、変化する環境にも柔軟に対応できる点がAMRの大きな強みです。
AMRの主な活躍シーン
- 物流・倉庫業(倉庫内での物品のピッキングや搬送)
- 製造業(部品や製品の搬送、自動化された生産ラインの補助)
- 医療分野(病院内での薬品や医療機器、サンプルの運搬)
- 小売業(店内の商品補充や在庫管理の自動化)
- 建設業(建設現場での資材搬送や検査のサポート)
- 清掃・消毒(公共施設やオフィスでの自動清掃や消毒作業)
- ホテル・サービス業(客室への物品配達や、ルームサービスの自動化)
AIとセンサー技術のさらなる進化に伴い、AMRは今後、より複雑な作業や多種多様な環境での運用が可能になると予測されています。また、さまざまな業界での活用が拡大し、さらなる自動化と効率化が進むでしょう。
③自動誘導車(AGV)
自動誘導車(AGV:Automated Guided Vehicle)は、工場や倉庫などの産業現場で、物品や材料を自動的に搬送するために使用される産業用ロボットです。
AGVは、磁気テープ、レーザー、光、または地上に設置されたガイド線などを使って、決められた経路に沿って移動します。特に、固定された経路での搬送に適しており、事前に定義されたエリアでの作業を自動化することで生産ラインの効率化が可能です。
AGVの主な活躍シーン
- 工場での部品搬送(生産ラインの各工程への自動供給)
- 倉庫での在庫管理・搬送(商品の自動ピッキングと搬送)
- 物流センターでの荷物搬送(荷物の自動搬送と仕分け)
- 病院や医療施設での搬送(薬品や医療器具の搬送)
- 空港での荷物搬送(荷物を自動で搬送し、効率的な空港業務をサポート)
- 製薬業界での薬品搬( 医薬品の製造ラインで、正確で清潔な搬送)
- 食品業界での材料搬送(食品加工施設で材料を自動搬送し、衛生的で効率的な生産を支援)
ただし、AGVは事前に設定された経路を移動するため、経路変更や柔軟な対応が難しい場合がある点には注意が必要です。
協働ロボットでの四足歩行ロボット活用事例5選
先述したように、近年では四足歩行の協働ロボットの活躍が目覚ましいです。
そこでここでは、協働ロボットとしての四足歩行ロボットの活用事例を5つ厳選してご紹介します。
①インフラ点検・保守
四足歩行ロボットは、インフラ点検・保守の分野で急速に普及しつつあります。特に、アクセスが困難な場所や、危険な作業環境での点検作業において、その能力が大いに発揮されています。
インフラ点検・保守の主な活用事例
- 難所での自律的な点検(トンネルや配管内部、狭小空間など、人がアクセスしにくい場所での点検作業)
- 構造物の変形検知(3Dスキャン技術を活用して、トンネルや建築物のミリ単位の変形や劣化を検知)
- 危険環境でのデータ収集(高温、放射線、ガス漏れなどの危険がある環境での温度や圧力、振動データの収集)
- 災害時のインフラ点検(地震や洪水後のインフラ被害状況の迅速な確認と評価)
- 自律移動による保全作業(自律的に移動しながら、配管や機械設備の定期的なメンテナンス点検を実施)
このように、四足歩行ロボットは、インフラ点検・保守の分野で安全性と効率性を大幅に向上させています。
②災害対応・救助
四足歩行ロボットは、災害対応や救助の分野でも大きな役割を果たしており、特に困難な環境や危険な状況での作業において、その優れた機動力と自律性が活用されています。
災害対応・救助分野の主な活用事例
- 不整地での移動(がれきや損壊した建物の上を安定して歩行し、人が入れない場所での活動を可能にする)
- 初動対応での情報収集(遠隔操作で現場の状況を確認し、リアルタイムで映像やデータを送信)
- 3Dマッピング(建物内部やがれきの状況を正確に把握し、安全な救助活動をサポート)
- 遠隔操作での作業支援(ドアの開閉や軽い物の移動など、救助活動の補助を行う)
- インフラの点検(災害後の電力やガス設備の損傷状況を確認し、復旧作業の効率化を支援)
このように、四足歩行ロボットは災害対応や救助活動において、人間が立ち入りにくい危険な環境で情報収集や支援を行う重要なツールとして活用されています。
③石油プラントやガス施設の点検
石油プラントやガス施設の点検では、四足歩行ロボットが効率的かつ安全な点検作業に大きく貢献しています。
こういった施設は人間がアクセスしづらい場所や危険な環境が多く、定期的な点検が欠かせませんが、四足歩行ロボットはその柔軟な移動能力と高度なセンサー技術を生かして、従来の点検方法を劇的に改善しています。
石油プラントやガス施設での主な活用事例
- 自律移動による定期巡回点検(決められたルートを自律的に巡回し、設備の異常を検知)
- 温度や振動の異常検知(サーマルカメラや振動センサーを使って、配管や設備の温度や振動の異常をリアルタイムで監視)
- 有害ガスの検知(ガスセンサーを搭載し、ガス漏れのリスクがあるエリアでの安全な点検を実施)
- 遠隔操作による点検作業(管理者が遠隔でロボットを操作し、メーターの計器点検や写真撮影を行う)
- 危険エリアでの安全点検(人が立ち入れない危険なエリアで、設備や配管の状態を安全にモニタリング)
このように、四足歩行ロボットは、石油プラントやガス施設における安全性向上と効率的な点検作業において、重要な役割を果たしているのです。
④農地での監視や収穫作業
四足歩行ロボットは、農地での監視や収穫作業において、効率化と精度向上のために重要な役割を果たしています。特に、農業分野では地形の多様性や気候条件が厳しい場所でも安定して作業が行えるという点が評価され、次のような活用が進んでいます。
農業分野での主な活用事例
- 農地巡回による監視(自律的に農地を巡回し、作物の生育状態や病害をリアルタイムで監視)
- 作物の異常検知(カメラやセンサーを使って、病害や生育の異常を早期に発見)
- 土壌や気候データの収集(土壌の水分量や気温などのデータを自動収集し、作物の最適な栽培環境をサポート)
- 自動収穫(AIと物体認識技術を活用して、果実や作物の成熟度を判断し、自動で収穫作業を実施)
- 不整地や傾斜地での作業(四足歩行ロボットの優れた移動性能により、厳しい地形でも収穫や点検作業が可能)
これにより、農地での監視や収穫作業が自動化され、農業の効率化と人手不足の解消が期待されています。
⑤建設現場での進捗監視や安全管理
建設現場では、四足歩行ロボットが効率化と安全性向上のためにさまざまな形で活用されています。特に、複雑で危険な環境での作業において、四足歩行ロボットは人間に代わる重要な役割を果たしています。
建設現場での主な活用事例
- 自動巡回と進捗管理(自律的に現場を巡回し、工事の進捗状況や安全管理をリアルタイムで行う)
- 遠隔操作による現場監視(遠隔地からロボットを操作して現場の監視を行い、安全確認や作業の進行状況を把握)
- 危険な作業環境でのサポート(傾斜地やトンネル内など、危険な場所での作業や調査をロボットが代行)
- 安全リスクの軽減(人間が立ち入りにくい危険区域での調査や測量をロボットが行い、安全性を向上)
- リアルタイムデータ収集(カメラやセンサーを使い、現場のデータをリアルタイムで収集し、作業効率化をサポート)
このように、四足歩行ロボットは建設現場での効率化、安全性の向上、そして遠隔操作を通じた精密な管理を実現するために欠かせない存在となっています。
今後、さらに多様な用途での活用が進んでいくことになるでしょう。
協働ロボットの導入に重要となるシミュレーション
協働ロボットを業務にうまく組み込むには、最新のシミュレーション技術についても併せて知っておくべきです。
協働ロボットはコストパフォーマンスに優れているとはいえ、決して安い投資ではありません。導入効果を最大限にするためにも、ロボットシミュレーションの重要性を今一度把握しておきましょう。
設計ミスや動作不良などのリスクの早期発見
協働ロボットの導入において、シミュレーションが重要な理由の一つは、設計ミスや動作不良を事前に発見できる点です。
シミュレーション技術を用いることで、ロボットの動作や作業環境内での動きがどのように展開されるかを仮想環境で再現できます。
これにより、実際にロボットを現場に投入する前に、設計段階でのミスや不適切な動作がないかをチェックすることが可能です。
例えば、ある工場で協働ロボットを使用して部品の組み立て作業を行う計画があった場合、シミュレーションを行わずに現場に導入すると、ロボットが予期しない障害物に衝突したり、作業スペースが不十分で手順が滞ったりする可能性があります。
しかし、シミュレーションで動作や環境を再現すれば、こうしたリスクを事前に発見し、ロボットの動作パターンや作業スペースを調整することで、問題を未然に防げるのです。
コスト削減
シミュレーションを活用することで、長期的なコスト削減が実現します。
なぜなら、シミュレーションは現場でのトライアンドエラーを最小限に抑え、設計や動作の問題を事前に解決する手段として非常に効果的だからです。
導入後にロボットの動作を修正するには、大幅なシステム調整や設備の変更が必要になる場合がありますが、シミュレーションによってこれらのリスクを低減できます。
例えば、ロボットの作業スケジュールや効率をシミュレーションで最適化することで、初期導入費用を削減できるだけでなく、後々のメンテナンスや運用コストの低減につながります。
他にも、部品の摩耗やメンテナンスのタイミングをシミュレーションで予測することで、予期せぬダウンタイムを防ぎ、生産性を向上させることも可能です。
柔軟なシステム設計
シミュレーションを利用することで、システム設計における柔軟性も向上します。
設計段階でシミュレーションを行うことにより、ロボットの動作や作業フローをさまざまなシナリオで検証し、必要に応じて設計の変更や最適化が可能です。
例えば、製造業で協働ロボットを導入する際、作業内容や現場のレイアウトが頻繁に変更されることは少なくありません。しかし、シミュレーションを活用することで現場の変更に柔軟に対応し、ロボットの動作や作業フローを再設計することが可能です。
また、ロボットの複数配置や作業員との連携をシミュレートし、最適な作業フローを見つけることができるため、柔軟な対応が求められる現場でもスムーズに運用できるシステムを構築できます。
なお、ロボットシミュレーションを行うのなら、世界的GPUメーカーのNVIDIA社の提供するプラットフォーム「Isaac Sim」がおすすめです。
Isaac Simについては、こちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せてお読みください。
ロボットシミュレーションには「Unity」と「Omniverse」がおすすめ!
Unity(ユニティ)とOmniverse(オムニバース)も、ロボットシミュレーションにおすすめのプラットフォームです。
Unityといえば、世界的に普及しているゲームエンジンとして有名ですが、ロボットシミュレーションにも活用できます。Unityは、リアルタイムのシミュレーションに特化しており、視覚的にリアルな環境でロボットの動作をテストできることが強みです。
多くの企業がUnityを使用して、ロボットの動作やアルゴリズムを直感的にプログラムし、実際の作業環境に近い形でのテストを行っています。Unityについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
Omniverseは、NVIDIA社が提供するプラットフォームで、物理シミュレーションやAIのトレーニングに強みを持っており、ロボットの挙動や動作を物理法則に基づいて正確に再現することが可能です。Omniverseについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しているので、ぜひ併せてお読みください。
協働ロボットのおすすめメーカーと周辺機器
協働ロボットは成長が著しい分野なので、昨今では国を問わずさまざまなメーカーから製品がリリースされています。
そこでここでは、協働ロボットのおすすめメーカーと導入に不可欠な周辺機器をご紹介します。
DEEPRobotics社
DEEPRobotics社は、ロボティクス技術のリーディングカンパニーで、特に四足歩行ロボットの開発に注力しています。
同社の主力製品である「X30」は、産業向けの四足歩行ロボットとして開発され、石油プラントやガス施設、トンネルなど、過酷な環境での作業に特化しています。
-20℃から55℃までの広範囲な温度に対応し、障害物を回避しながら自律的に動作します。さらに、複雑な地形や階段の昇降が可能で、点検や救助活動に最適です。
バッテリー交換も容易で長時間の連続運用が可能な設計となっており、全天候型の自律点検や救助活動を支援します。また、協働作業にも対応しており、人間との接触を避ける自動回避機能を備え、安全な作業環境を実現します。
DEEPRobotics社のX30に関するお問い合わせはこちらのリンクから承っているので、ぜひ一度ご検討ください。
Unitree Robotics社
Unitree Robotics社は、四足歩行ロボットの分野で急速に成長を遂げている中国のロボティクス企業です。
革新的な技術と高性能なロボットを比較的手頃な価格で提供しており、産業界や研究機関、さらに消費者市場に向けた製品を多くリリースしています。
同社の協働ロボットであるGoシリーズ(Go1、Go2)は、軽量かつ高速な四足歩行ロボットで、機動力に優れているので産業用点検や物流業務での自動化に最適です。
また、教育や研究分野でも使用されており、学生や研究者がAIやロボティクスの技術を実践的に学ぶためのプラットフォームとしても活躍しています。特にGo1は世界中で人気があり、手頃な価格でありながら高度な機能を持つため、個人でも導入が可能です。
これ以外にも、ロボットアームやHumanoidシリーズ(H1、G1)と呼ばれるヒューマノイドロボットなども開発しています。
Unitree Robotics社の製品については、こちらのリンクからご確認ください。
モバイルワークステーション
協働ロボットは、リアルタイムでのデータ処理やAIによる自律学習を行うため、複雑な演算や3Dシミュレーションを実行できる強力なコンピュータが欠かせません。
したがって、ロボットの動作やセンサーからのデータを即座に処理し、現場での迅速なフィードバックを実現するためには、高性能なモバイルワークステーションが必要です。
モバイルワークステーションならば、レノボ社のThinkPadシリーズがおすすめです。
例えば、ThinkPad P16は、Intel Core i9プロセッサとNVIDIA RTXグラフィックスを搭載しており、3DシミュレーションやAIトレーニングに必要な膨大な演算能力を実現します。
このスペックであれば、ロボットの動作シミュレーションやセンサーデータのリアルタイム処理が可能で、現場での効率的な運用を支援します。
また、レノボ社のモバイルワークステーションは、頑丈な設計と豊富な接続オプションを備えており、Thunderbolt 4ポートなどにより、外部デバイスやセンサーとの接続が容易です。これにより、協働ロボットとのシームレスなデータ通信やシステム設定が可能となり、高度なモビリティを実現します。
コストパフォーマンスにも優れており、最新技術をリーズナブルな価格で導入できるため、予算を重視する企業にも適しています。
レノボ社のモバイルワークステーションのラインナップは、こちらのリンクからご確認ください。
協働ロボット導入のご相談はアスクまで!
本記事では、協働ロボットの基本的な仕組みから、産業用ロボットとの違い、最新の活用事例を解説しました。
協働ロボットは、人とロボットが安全に共存しながら作業を進めるための技術であり、労働力不足の解消や効率的な生産活動を支える重要な存在です。今後も技術革新とともに進化を続け、労働力不足の解消や作業環境の改善に大きな役割を果たしていくでしょう。
特に、AIやセンサー技術の進化によって、ロボットと人間がより安全に、より効率的に協働できる環境が整うことが期待されます。しかし、協働ロボットの導入は専門知識がなければできるものではありません。
そんなときはぜひアスクまで一度ご相談ください!
株式会社アスクは、個々のニーズに応じたソリューションを提供する総合商社です。ロボティクスの分野でも多くの世界的リーディングカンパニーとパートナーシップを結んでおり、それぞれの目的に応じた最適なソリューションをご提案しています。
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監修者:麻生哲
明治大学理工学部物理学科を卒業後、ITベンチャーにて多数のプロジェクトを成功に導く。子会社を立ち上げる際には責任者として一から会社を作り上げ、1年で年商1億円規模の会社へと成長させることに成功。現在は経験を活かし、フリーランスとしてコンテンツ制作・WEBデザイン・システム構築などをAIやRPAツールを活用して活動中。
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
株式会社アスクでは、最新のPCパーツや周辺機器など魅力的な製品を数多く取り扱っています。
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