ペンタブレットはPC等で手書き入力をするためのデバイスだ。ただ、PCを使う場合、使用する入力デバイスはほとんどの人がキーボードとマウス。手書き入力はイラスト制作や写真のレタッチなど、クリエイティブな作業向けと考えている人は多いのではないだろうか。しかし、実はオンライン会議のホワイトボード機能やPDFファイルへのメモ書きなど、手書き入力ができると便利なシチュエーションは意外と多い。
今回はプロ向けをうたうペンタブレットメーカー、Xencelabs Technologies(センスラボテクノロジーズ)とその製品を紹介する。まずはペンタブレットそのものの基本的な事柄を確認していこう。
タブレットの種類を確認
板タブと液タブ
ペンタブレットには、大きく分けて2種類ある。ペン入力する機能だけのものと、ディスプレイを搭載していて画面に直接ペン入力できるものだ。前者は「板タブ(板タブレット)」、後者は「液タブ(液晶タブレット)」とも呼ばれる。それぞれ特徴があり、どちらを使いやすいと感じるかは人それぞれだ。
板タブはPCのディスプレイを見ながら操作するため、通常のPC操作に近い感覚で利用できる。マウスの役割を代替をすると考えるとイメージしやすいだろう。一方、液タブは手元のディスプレイを見ながら操作するため、使用中の姿勢が紙に書く場合に近くなる。より直観的に使えるのは液タブだが、手元を見下ろす姿勢が使いにくい、疲れやすいという理由で板タブを選ぶ人もいる。
ペンタブレットは専用のデジタルペンを使って入力するユーザーインターフェース。ペンの形状やペン先の素材、タブレットの表面処理などの違いで、製品によって書き心地が異なる。ペン入力以外の機能にも違いが大きい。
ペンタブレットには入力方法が2種類ある。相対座標方式と絶対座標方式だ。相対座標方式はペンを少し浮かせて動かすことでマウスポインターを操作する。タブレットのどこで操作しても同じ結果になるので、サイズの小さいタブレットはこの方式を使うことが多い。絶対座標方式はタブレットの中央がディスプレイの中央、タブレットの端がディスプレイの端という風に両者が位置で対応する方式だ。ペンで指した場所にマウスポインターが瞬間移動するので、ポインターを動かす時間をなくせる。液タブは基本的に絶対座標方式で利用する。
Xencelabsは板タブを中心に製品展開しており、2022年8月時点で液タブは販売していない。
ペンの動作方式
ペンタブレットはペンで操作する。指でのタッチ操作に対応する場合もあるが、ペンタブレットの機能としてはあくまで補助的なものだ。ペンの使いやすさが製品の使いやすさに直結する。
ペンには動作方式が複数ある。主流は「EMR(電磁誘導)方式」と「AES(アクティブ静電容量)方式」の2種類だ。EMR方式はペンを検知するために専用のセンサーが必要。その代わり高精細な読み取りが可能で、ペン側にバッテリーが不要という特徴がある。Xencelabsがペンタブレットに付属しているペンもEMR方式だ。AES方式はタッチ操作でも採用される静電容量センサーを使うため、2in1ノートPCやタブレット端末などと相性が良い。端末がタッチ操作に対応していれば、機能を追加する形でペンにも対応させられるためだ。ただし、この方式はペン側にバッテリーが必要となる。
また、ペンを動作させるにはソフト側の仕組み(プロトコル)も必要。動作方式が同じでも、プロトコルが異なる場合は利用できない。プロトコルは各メーカーが独自のものを採用するのが一般的だ。基本的にメーカーをまたいでペンを共有することはできず、同じメーカー内でも別の製品シリーズでは互換性がないこともある。
マイクロソフトの「MPP(Microsoft Pen Protocol)」、Googleの参加する「USI(Universal Stylus Initiative)」などペンタブレットのメーカー以外が主導した汎用プロトコルもある。ただしこれはノートPCなどがペン入力機能を導入する際に使われることが多く、単体で販売されるペンタブレットが対応していることはあまりない。
ペンタブレットを使うメリット
直観的な操作ができる
ペンタブレットのメリットは、マウスよりも直観的に操作ができることだ。ほとんどの人がPCを使い始める前からペンは使っていたはず。その馴染んだ動作でPCの操作ができるのであれば、より分かりやすいのは自然だろう。もちろんマウスでも同じようなことはできるが、イラストを描く、文章に線を引く、重要な部分に丸を付けるといった操作はマウスではやりにくい場合もある。
また、テレワークが普及した現在は冒頭で触れたようにPDFファイルに直接メモ書きをする、テレビ会議のホワイトボード機能を使うといった手書き入力を利用する機会は増えている。ペンが付属する2in1ノートPCも人気があり、次々と新しいモデルが登場しているほどだ。
PCが手書き入力の機能を内蔵しているのも便利だが、これはあくまでPCの機能の1つに過ぎず、カスタマイズ性はあまりない。単体で販売されているペンタブレットの強みは、機能やオプション品などを検討して使いやすい製品を選べる点だ。
また、ペンでやりやすくなるのは線を引くことだけではない。動画編集や写真のレタッチなど、画面内の場所を指定してドラッグするという操作を繰り返すシーンではペンの方が作業しやすい。プロカメラマンが撮影した写真の仕上げをするために導入していることも多い。
ただ、ペンタブレットは置き場所を確保するためにマウスよりスペースを取るという弱点もある。タブレットはキーボードの手前に置くことが多いため、少しキーボードは手元から遠くなってしまう。そこで、キーボードを操作する頻度を下げるため、タブレットはショートカットキーを搭載していることが多い。このショートカットの数や配置、登録できる機能の種類なども使い勝手に影響するポイントだ。
Xencelabsとは?
プロ向けの製品を主力としたグローバルメーカー
Xencelabsは米国のワシントン州バンクーバーに本社を置き、グローバルに製品展開をしているペンタブレットメーカーだ。現在は板タブを中心に販売している。プロ向けをうたっていることも特徴の1つで、アーティストとのパートナーシップやユーザーからのフィードバックを通して、クリエイターが使いやすい製品を作ることをミッションとしているという。
大きな特徴が、同社の販売するペンタブレットは全てデジタルペンが2本付属する点だ。ペンの使い心地は作業効率に大きく影響し、1つの形状で全ての人が使いやすいものを作るのは困難だ。ユーザーの視点でも、実際に使い比べてみないとどちらが良いという判断は難しい。そこで太めと細めの2種類を用意することで、ユーザーが使いやすい方を選べるようにしているというわけだ。2本のペンを両方収納できるケースも付属しており、細かなところまで配慮が行き届いている。付属品は全て単体でも購入可能で、長期間継続して利用するためのサポートも万全だ。
また、法人向けの製品も展開している。教育現場ではICT教育の一環でペンタブレットを導入するケースが増えているため、ペンタブレット10台とペン15本、専用ケースなどをセットにした「エデュケーションパック」を用意している。
次回は、そんなXencelabsの製品を実際に使ってみる
次の手順を見る(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。