AMDは2011年5月、ミドルクラスの新チップ「AMD Radeon HD 6770」を投入した。チップの基本的な仕様は既に出荷されているミドルクラスモデル「AMD Radeon HD 5770」と同等だが、対応APIやインターフェース、AMDの多画面出力技術などが強化されている。また、同チップ搭載品は、各ボードメーカーが工夫を凝らした独自のクーラーを備えるのも特徴だ。ここで紹介する「SAPPHIRE VAPOR-X HD6770 1G GDDR5 PCI-E DUAL DVI-I/HDMI/DP OC VERSION」(以下VAPOR-X HD6770)も、高い冷却性能と静音を両立したクーラーを装備している。
グラフィックスチップ | AMD Radeon HD 6770 |
コアの動作周波数 | 860MHz |
搭載メモリー(動作周波数) | GDDR5 SDRAM 1GB 128ビット(4.8GHz) |
出力端子 | DVI-I×2、DisplayPort×2、HDMI×1 |
補助電源端子 | PCI Express用6ピン×1 |
本体サイズ(W×D×H) | 204×38×111mm |
AMDのミドルクラスチップ「Radeon HD 6770」を搭載した「SAPPHIRE VAPOR-X HD6770 1G GDDR5 PCI-E DUAL DVI-I/HDMI/DP OC VERSION」。冷却や静音に注力したグラフィックボード用クーラーを備える「VAPOR-X」シリーズの1つ。チップの性能は旧モデルの「Radeon HD 5770」と同等。ただし、同製品はレファレンスモデルからコアの動作周波数を10MHzオーバークロックしている。
Sapphire独自の冷却機構は、冷却性能が高くて静か
VAPOR-X HD6770は、近未来的なデザインのグラフィックボード用クーラーを搭載するのが大きな特徴。このクーラーには、Sapphireが「VAPOR CHAMBER」(ベイパー・チェンバ)と呼ぶ冷却技術を採用している。これはヒートパイプの一種で、熱源で暖められた冷却水を放熱フィンへ運び、ファンで冷却するという仕組みは従来通り。さらに、ヒートパイプのウィック(パイプの内側の構造や素材)に同社のノウハウを盛り込んでおり、一般的なヒートパイプより熱伝導率を高めている。
熱を効率良く伝える構造を採用しているため、ファンは直径8cmを1つしか搭載していない。動作音が静かなのも大きなポイントだ。このほか、コイルやコンデンサーにも選別品を使うなどしてパーツの信頼性を向上。グラフィックボード全体を冷やすクーラーの構造により、ボード自体を長寿命化している。長く使える高性能ボードでもあるわけだ。
映像出力端子を豊富に備えるのもVAPOR-X HD6770の魅力。DVI-Iを2個、DisplayPortとHDMI端子をそれぞれ1個ずつ用意。マルチディスプレイが手軽に実現できるほか、DisplayPortやHDMI端子を使って液晶テレビとの接続が楽にできる。
採用クーラーはSapphire独自のモデル。グラフィックスチップはもちろん、ボードやボード上のパーツを効率良く冷やせる構造。ファンの形状に工夫し、静音性も高い。 |
背面端子はDVI-Iが2個、DisplayPortが1個、HDMIが1個。DVI-IをD-Sub15ピンにする変換端子、ペリフェラル用4ピン1個をPCI Express用6ピン1個にする変換ケーブルが付属する。 |
DirectX 11環境では、ライバルチップに並ぶ処理速度
冷却性能や静音性が優れていても、描画能力が低ければ魅力は薄まる。そこで5種類のテストプログラムを用意し、Radeon HD 6670の描画能力とVAPOR CHAMBERの実力を検証した。テストに使用したアプリケーションは「3DMark 11」「3DMark Vantage」「3DMark06」「MHF ベンチマーク 第2弾【絆】」「Colin McRae:DiRT2」。また、3DMark11実行中のGPU温度を「HWMonitor 1.18」で計測した。比較対象として用意したグラフィックボードは、高品質なクーラーを備えた「R6770 Twin Frozr II OC」(MSI)と、NVIDIAの高性能チップ「NVIDIA GeForce GTX 550 Ti」を搭載した「N550GTX-Ti Cyclone II 1G D5 OC」(MSI)だ。
3DMark 11、同Vantage、同06は、それぞれDirectX 11、同10、同9のAPIを使う定番ソフト。グラフィックボードの3D描画性能を調べられる。3DMark 11と同Vantageは負荷の低い「Performance」と高負荷の「Extreme」の2種。3DMark06は解像度を1280×1024ドットにした状態と、1920×1200ドット、アンチエイリアスを8x、異方向性フィルターを16に設定した状態でテストした。その結果、3DMark 11と同06は、GTX 550 Ti搭載ボードと比べてもそん色ないスコアとなった。
「DirectX 11」を使う「3DMark 11」の結果。NVIDIAのミドルクラスチップ「GeForce GTX 550 Ti」とほぼ同等のスコアを記録。
「DirectX 10」のAPIを利用する「3DMark Vantage」では、GeForce GTX 550 Ti搭載品がやや優勢。
人気オンラインゲームが採用している場合が多い「DirectX 9」を使う「3DMark06」の結果。いずれのグラフィックボードも、ほとんど差が付かず横並びのスコア。
高解像度設定でHD 6770が優位になる場合も
「PCゲームはNVIDIAが有利」というのが定説。しかし、ゲームによってはAMDのグラフィックスチップが優秀な成績となる場合もある。カプコンの人気オンラインゲーム「モンスターハンター フロンティア オンライン」をベースとしたベンチマークプログラムでは、高負荷の状態でGTX 550 Tiのスコアを上回った。
次に、VAPOR CHAMBERの冷却能力をチェックしてみよう。PCパーツの状態を確認できるフリーソフト「HWMonitor」(http://www.cpuid.com/)で、動作中のグラフィックチップ(GPU)の温度を測定。OS起動から15分後の値を「アイドル時」、3DMark 11のExtreme設定動作中の最大値を「高負荷時」とした。VAPOR-X HD6770のクーラーは優秀で、ファンを2基搭載するR6770 Twin Frozr II OCに迫る冷却能力を発揮している。
VAPOR-X HD6770の実勢価格は1万4000円前後。特に静音性を重視しつつ高性能なゲームPCを作りたいという人にオススメの1枚だ。
カプコンのオンラインゲーム「モンスターハンター フロンティア オンライン」のテストプログラム。画面解像度を1280×720ドットと、1920×1200ドットに設定してテストした。
DirectX 10と同11環境での動作を、人気レースゲームのテストプログラムでチェック。低負荷は画面解像度を1280×1024ドット、「MULTISAMPLING」を「2x MSAA」、「CHOOSE PRESET」を「MEDIUM」に設定。高負荷はそれぞれ1920×1200ドット、8x MSAA、ULTRAにした。
GPUの温度はシステムチェックツール「HWMonitor」(CPUID、http://www.cpuid.com/)で調べた。他社の高性能クーラー搭載品とさほど変わらない冷却能力を発揮。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
- ●SAPPHIRE TECHNOLOGY LIMITED社 概要
- 香港に本社を拠点に、設立以来15年以上に渡り、常に最新かつ確実なテクノロジに基づく高品質な製品を提供することをモットーに活動してきました。ISO9001および14001認定の工場で生産される製品は、妥協することなく厳しく品質を追求しています。 SAPPHIRE社のこれら高品質な製品は、業界の厳しいQC標準に合致します。SAPPHIRE社は、常に高品質の製品を供給することを約束します。詳しい情報はSAPPHIRE日本語公式サイトをご参照ください。株式会社アスクが日本での販売を担当しております。
- メーカーウェブサイト:http://www.sapphiretech.jp/