1万円半ばで買えるグラフィックボードのラインアップは層が厚い。比較的、手を出しやすい価格帯ということもあり、各グラフィックボードメーカーは工夫を凝らした製品を数多く投入している。そんな激戦区に「買い得感」あふれる製品が登場した。それが、Sapphire Technologyの「Sapphire HD6790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+SL-DVI-D/HDMI/DP」(以下HD6790 1G GDDR5)。新型プラットフォーム「Sandy Bridge」世代のマシンにぴったりの優れた製品だ。
AMDから登場したミドルクラスのグラフィックスチップ「Radeon HD 6790」を採用。Sapphire Technology独自のクーラーを採用し、動作時の静かさにも注力した。装着には、2スロットを占有する。
グラフィックスチップ | AMD Radeon HD 6790 |
コアの動作周波数 | 840MHz |
搭載メモリー(動作周波数) | GDDR5 SDRAM 1GB 256ビット(4.2GHz) |
出力端子 | DVI-I×1、DVI-D×1、DisplayPort×1、HDMI×1 |
補助電源端子 | PCI Express用6ピン×2 |
本体サイズ(W×D×H) | 306×40×113mm |
チップの位置付けは「Radeon HD 6850」と「同5770」の中間。価格帯で見れば、NVIDIAのミドルクラスチップ「GeForce GTX 550 Ti」のライバルとなる。
搭載するグラフィックスチップは、2011年4月に発表された「Radeon HD 6790」。チップやメモリーの動作周波数はレファレンス通りで、オーバークロックといった処理能力の向上はなされていない。だが、静音性に定評のある同社製クーラーを採用したり、映像出力端子もレファレンスから変更したりするなど、扱いやすさに注力した仕上がりとなっている。
特にクーラーの仕様がユニークだ。ファンの羽根(ブレード)は直線的な構造でなく、やや湾曲したデザイン。先端部分には、わずかな「ひねり」が加えられている。この形状のおかげか、ファンが回転する際の風切り音が小さい。負荷がかかり、ファンの回転数が高まった場合でも、動作音は非常に静かだった。
映像出力端子の構成はレファレンスボードと異なる。デュアルリンクや、シングルリンクに対応したDVI端子を、それぞれ1個ずつ搭載。HDMIやDisplayPortも備え、ディスプレイとの接続が楽にできる。 |
動作にはPCI Express6ピンを2個接続する必要がある。端子の位置はボードの上側で、一般的なPCケースに装着した際に側板の方を向く。 |
ドライバディスクのほか、ペリフェラル4ピンをPCI Express6ピンに変換するケーブルが2本、DVI端子をアナログRGB端子(D-Sub15ピン)にする変換コネクターが1個付属する。 |
描画能力でライバルのGTX 550 Tiを下す
4種類のアプリケーションを使い、当製品の性能を調べた。まずは、3Dグラフィックスの描画能力を調べる定番ソフト「3DMark 11」「3DMark Vantage」の結果を見てみよう。評価に用意したボードは、下位チップの「Radeon HD 5770」搭載品と、価格帯で競合する「GeForce GTX 550 Ti」搭載モデルだ。
「DirectX 11」を使う3DMark 11は、「Performance」設定でテストした。HD6790 1G GDDR5のスコアは3151と、ほかの2機種よりも高い成績を記録。ライバルのGTX 550 Ti搭載品より、3割以上も高速だった。「DirectX 10」環境での描画能力を調べる3DMark Vantageは、「Performance」と、より高負荷の「Extreme」の2種でテストした。3DMark 11の結果ほどの差は付かなかったとは言え、いずれの設定でもHD6790 1G GDDR5がトップだ。
DirectX 11のAPIを使う「3DMark 11」。同価格帯のGTX 550 Ti搭載品と比べて、30%以上も高速だ。
DirectX 10環境での描画能力を調べる「3DMark Vantage」。低負荷のPerformance、高負荷のExtremeのいずれも、GTX 550 Tiよりわずかに速い。
「低コストのゲームPC」にピッタリ
次に、PCゲームのエンジンを使ったテストプログラムを用いて、3Dゲームをどれだけ快適に動かせるかを調べた。カプコンのシューティングゲーム「ロスト プラネット 2」のベンチマークソフトでは、「DirectX 9」か同11使用時の描画性能を調べられる。DirectX 11使用時は同9と比べて、見栄えが美しく演出も派手になる場合が多い。その分、負荷も高まる。また、テストの結果は「fps」(Frames Per Second)と呼ぶ単位で表示される。この数値が多いほど映像が滑らかに動き、ゲームの快適さに大きく影響する。
画質や画面解像度などを変更する「PC SETTING」で画面解像度を1920×1080ドットに設定し、そのほかの項目は起動時のまま。「PERFORMANCE TEST」の「テストタイプA」を実行した。当テストでも、HD6790 1G GDDR5は優秀な成績を残した。DirectX 9環境では63.4fpsを記録。これなら描画の遅れもほとんどなく、快適にゲームをプレーできるだろう。なお、GTX 550 Ti搭載品は、DirectX 9でのテストにおいて著しく低い成績となってしまった。これは、数回テストしても同じだった。
スクウェア・エニックスが公開する「ファイナルファンタジーXⅣ オフィシャルベンチマーク」のスコアは、「LOW」設定で5200、「HIGH」で2868となった。同社のWebサイト(http://www.finalfantasyxiv.com/media/benchmark/jp/)によると、4500~5499は「快適」、3000~4499は「やや快適」、2500~2999は「標準的」な動作が見込めるとしている。HD6790 1G GDDR5なら、3Dグラフィックスを使った最新のオンラインゲームでも、余裕を持って楽しめる。
高性能なグラフィックボードを使う際に気になるのが消費電力だ。電力計を使い、CPUやドライブ類なども含むシステム全体の消費電力を調べた。OS起動から15分後の最大値を「アイドル時」、ファイナルファンタジーXⅣ オフィシャルベンチマーク(HIGH設定)動作中の最大値を高負荷時とした。
GTX 550 Ti搭載品は、アイドル時でHD6790 1G GDDR5より10W低い。だが、高負荷時はほとんど同じだ。描画能力の差を考えれば、HD6790 1G GDDR5の消費電力は優秀と言えるだろう。
HD6790 1G GDDR5は、今回試したほとんどのテストでGTX 550 Ti搭載品を上回る成績を残した。実売価格は1万6000円と手ごろなのも魅力的だ。上位チップである「Radeon HD 6850」搭載品の中には、同程度の価格で販売されているモデルもある。しかし、そうした製品はクーラーがレファレンスのままである場合が多く、高負荷時に動作音がうるさくなる恐れがある。コストを抑えつつも、最新のオンラインゲームをバッチリ楽しめるゲームPCを組みたいという人に、特にお薦めしたい1枚だ。
カプコンのアクションゲーム「ロスト プラネット 2」のエンジンを利用したテストプログラム。DirectX 11を使用した場合では、GTX 550 Tiとほぼ同等の性能だった。
オンラインRPG「ファイナルファンタジー 14」をプレーする際の快適さを調べた。低負荷の「LOW」設定なら描画の遅れも少なく、快適に遊べる。「HIGH」では、標準的な動作が見込める。
消費電力は、アイドル時こそGTX 550 Tiに劣るものの、高負荷時では同等。性能差を考えれば、優秀な結果と言える。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
製品概要
メーカー名 | Sapphire Technology |
製品名 | SAPPHIRE HD6790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+SL-DVI-D/HDMI/DP |
型番 | 11194-00-20G |
JANコード | 4537694133524 |
アスクコード | VD4225 |
店頭用POP
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- ●SAPPHIRE TECHNOLOGY LIMITED社 概要
- 香港に本社を拠点に、設立以来15年以上に渡り、常に最新かつ確実なテクノロジに基づく高品質な製品を提供することをモットーに活動してきました。ISO9001および14001認定の工場で生産される製品は、妥協することなく厳しく品質を追求しています。 SAPPHIRE社のこれら高品質な製品は、業界の厳しいQC標準に合致します。SAPPHIRE社は、常に高品質の製品を供給することを約束します。詳しい情報はSAPPHIRE日本語公式サイトをご参照ください。株式会社アスクが日本での販売を担当しております。
- メーカーウェブサイト:http://www.sapphiretech.jp/