小型で消費電力の低いパソコンが注目を集めている。用途は個人なら録画用パソコンや家庭用ホームサーバー、業務用では監視カメラ用クライアントや電子広告の制御用など、用途は幅広い。
便利な省電力PCだが、小さいゆえに拡張性は低い。Mini-ITXサイズはUSBに加えてPCI Expressボードが1本使えるかどうか。複数のボードは利用できない。人気のNUCは、拡張スロットが無く、USB以外の機器を接続するのは不可能だ。どちらも満足のいく構成にしにくいのだ。だが、視野を少し広げれば、省電力と高い拡張性を両立するマザーボードが見つかる。それこそ、MSIの「C847MS-E33」だ。
「C847MS-E33」は、microATXサイズで省電力CPUをオンボード搭載する珍しい製品だ。
搭載CPU | Celeron 847(1.1GHz、2コア) |
チップセット | Intel NM70 |
メモリー | DDR3 DIMM×2(最大16GB) DDR3-1333/1066対応 |
拡張スロット | PCI Express 2.0 x16×1、同x1×1、PCI×2 |
ストレージ | Serial ATA 6Gbps×1、3Gbps×3(NM70) |
サウンド | HD Audio6ch |
ネットワーク | Gigabit Ethernet |
USB | 背面×4 |
形状 | microATX |
実勢価格 | 9,000円前後 |
C847MS-E33の主なスペック
背面端子。映像出力はアナログRGBとHDMIの2種類を備える。業務用途での利用を視野に入れた作りで、シリアルポートを1個備える。
C847MS-E33は省電力CPUである「Celeron 847」を搭載する。サイズはmicroATXだ。CPU搭載のマザーボードでは極めて珍しい。拡張スロットは全部で4本を備える。種類はCPUに近い方からPCI Express x1、PCI Express x16、PCI×2だ。比較的最近の機器から業務向けで何年も使い続けている機器まで幅広く対応できる。例えば、PCI ExpressにはTVチューナーボードや外部入力のキャプチャーボードを取り付けられる。他にもRAIDボードに拡張ボードタイプのSSDなども利用可能だ。PCIスロットなら業務用の検査機器用の接続ボードや古い機器を接続するために端子を変換するボードなど、こちらも多種多様。拡張性はMini-ITXやNUCとは比べものにならないほど高くなっている。
搭載するCPUのCeleron 847は、2個のコアを内蔵するデュアルコアモデル。動作クロックは最大1.1GHzだ。ポイントはTDPが17Wと極めて低い点。発熱が少ないため、CPUクーラーはファンレスだ。冷却用に大型のヒートシンクを備えている。microATXサイズのケースは、小型のタイプでもMini-ITXやNUCのケースに比べて大きく熱がこもりにくい。ファンレスでも問題無く放熱できる。
拡張スロット。一番上にある小さいスロットがPCI Express x1、青いスロットがPCI Express x16だ。 |
搭載するヒートシンク。細長いフィンで表面積が大きくなっている。背が低く、PCケース内で他のパーツに干渉することはないだろう。 |
Serial ATA端子は4個あり、うち1個は高速なSerial ATA 6Gbpsタイプだ(白い端子)。残りの3個はSerial ATA 3Gbpsとなる(黒い端子)。 |
microATXケースに取り付けた。厚みが2スロット分の拡張ボードをPCI Express x16スロットに増設しても、PCI Express x1スロットは併用可能な配置になっている。 |
性能と消費電力が気になるところだ。今回は、microATXケースにC847MS-E33を取り付けてベンチマークを取った。パーツ構成はメモリーがDDR3-1333(4GB×2枚)、SSDはVertex4(OCZ Technology、256GBモデル)、PCケースにはFractal DesignのDefine Mini、電源ユニットはZalman TechのZM750-XG(750W)を組み合わせた。
性能はPCMark 7(Futuremark)で調べた。Web閲覧や画像の圧縮などアプリケーションの動作を模したベンチマークソフトだ。実際にパソコンを使った際の体感的な速さが分かる。スコアは2410で低消費電力を売りにするデスクトップ向けのCPUと互角だった。負荷の高い処理を長時間続けるのは難しいが、Webの閲覧や文書作成程度の作業ならストレスは感じない。
PCMark 7のスコア詳細。SSDを使ったこともあり、ストレージ関連の項目は高かった。CPUの性能を考えれば、映像変換のスコアも良好だ。
消費電力は、上記で紹介した電源ユニットを使った構成でアイドル時26W、負荷時でも38Wだった。電球1個にも満たない消費電力だ。CPUの温度はアイドル時が25℃前後、負荷をかけると一気に50℃前後まで上昇。その後10分ほど欠けて80℃前後まで上がった。その後さらに10分ほど負荷をかけ続けたが、熱で止まることは無かった。温度が高止まりすると、CPUの負荷が落ちて温度が75℃前後まで下がる。すると再び負荷が上がって80℃程度まで温度が上昇した。
消費電力が低いため、試しに150Wまで対応可能なACアダプターで給電した。アイドル時が20W、負荷時は31Wと電源ユニットを使った場合よりも消費電力が6~8Wも低かった。C847MS-E33を使えば、完全ファンレスで常時稼働させるPCの構築も実現可能だ。
消費電力測定の結果。電源ユニットを使った構成でも負荷時の最大消費電力が38W。ACアダプターを使えば負荷時に31Wまで消費電力を低減できる。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
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- ●MSI社 概要
- MSI(Micro-Star International)は、台湾に本社を置き、各種メインボードやグラフィックボード、そして近年では、ノートブックや液晶一体型などPCシステム全般を幅広く製造販売するメーカーとして世界各国でその活動を展開しています。
- メーカーウェブサイト:http://jp.msi.com/