製品レポート

夏を乗り切るCPUクーラーはこれだ!水冷モデル最新4製品【2017年版】

個性豊かな一体型水冷CPUクーラー4モデルをご紹介

CPUクーラーは大きく空冷と水冷に分けられる。空冷はヒートシンクを直接CPUに当てて冷やすのに対し、水冷クーラーはヘッド(水枕とも呼ばれる)がCPUからの熱をクーラント(冷媒となる液体)に移して移動させ、ラジエーターで放熱する。

空冷は構造が単純で使いやすいのがメリットだが、CPU周辺にスペースがないと大きなヒートシンクが使えないという制限がある。水冷は離れたところにラジエーターを取り付けられるので、CPU周辺にスペースがなくとも利用できる。ラジエーターを大型化しやすいため、冷却能力を上げやすいのもメリットだ。一方、ラジエーターを固定する場所が必要になるので、組み合わせるPCケースを選ぶのがネックだ。それぞれの特徴を理解した上で最適な製品を選ぼう。

水冷は元々パーツ単位で販売されており、ラジエーターとヘッドの他にチューブ、継ぎ手、リザーバータンク、ポンプといった部品を自分で組み立てるものだった。ヘッドを増やしてビデオカードも冷やしたり、大型のラジエーターで冷却能力を高めたりといった自由度の高さが売りだ。しかし、チューブの全長が長過ぎるとポンプの能力が不足したり、クーラントが蒸発等で減って循環しなくなったり、継ぎ手の固定が甘くて漏水したりと、きちんと運用するにはノウハウが必要でハードルの高いものだった。そこで登場したのが「一体型水冷クーラー」「簡易水冷クーラー」などと呼ばれる製品だ。出荷時点で組み立て済み、冷却水の目減りが極めて少ないという特徴を持っており、水冷のハードルの高さを払拭している。

一体型水冷クーラーは高い冷却能力を求める人を中心に人気が高い。ここでは4製品を紹介する。基本的な構造はみな同じだが、ラジエーターの大きさやファンの仕様などで特性に差がある。また、水冷クーラーはファンの他にポンプ用の電源が必要になるため、マザーボードのファン用電源端子が足りなくなることもある。メーカーはそれぞれの方法で対策しているので、製品選びのポイントの一つになる。

冷却性能と騒音値のバランスがよい
MasterLiquid 240(Cooler Master Technology)

Cooler Master Technology MasterLiquid 240 製品画像

対応ソケット Intel:LGA2066/2011-3/2011/1366/1151/1150/1156/1155/775
AMD:Socket FM2+/FM2/FM1/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2
搭載ファン 12cm×2
ファンの回転数 650~2000rpm(PWM)
騒音値 6~30dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅119.6×奥行き277×高さ27mm

※AM4アップグレードキットが必要

24cmクラスのサイズのラジエーターを採用した水冷クーラーだ。ラジエーターの外装は丸みを帯びたデザインが多いが、MasterLiquid 240は角ばったデザインを採用している。チューブの素材はFEP。冷却液が蒸発しにくく、固いので曲げた際につぶれて水流が滞ってしまうトラブルが起こりにくい。さらにチューブはメッシュのカバーで覆われており、傷が付きにくく見た目もよい。ヘッドにはLEDを内蔵しており、電源を入れるとロゴが光る。付属ファンは12cm角が2個。PWM方式での回転数制御に対応した「MasterFan 120 AB」が付属する。ファン用電源の分岐ケーブルが付属しているため、ポンプ用と合わせて必要なマザーボードの電源端子は2個となる。

ロープロファイル・デュアルチャンバーを採用

ヘッドは一面銅製。「ロープロファイル・デュアルチャンバー」という機構を採用している。内部が2層構造になっており、冷却液の入り口と出口で区画が分かれている。ポンプがCPUの発熱で温まったクーラントに直接触れないようにすることで、寿命を延ばす効果があるという。

振動による騒音が起こりにくい12cmファン

ファンは12cm角。ねじ穴周辺にゴムのクッションが貼り付けてあるので、振動による騒音が起こりにくい。

付属品は多い

リテンションを組み立てるタイプのため、付属品の点数は多い。ヘッドを留めるねじが手回しタイプなので、仮留めがしやすい。

長さに余裕がある電源ケーブル

MasterLiquid 240を取り付けたところ。ファンの電源ケーブルは分岐ケーブルを使うこともあり、長さに余裕がある。写真ではケーブルも見せるために隠していないが、マザーボード裏に回せばもっとすっきりさせられる。

大型ラジエーターで強力に冷やす
H110i(CORSAIR)

CORSAIR H110i 製品画像

対応ソケット Intel:LGA2066/2011-3/2011/1366/1151/1150/1156/1155
AMD:Socket FM2/FM1/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2
搭載ファン 14cm×2
ファンの回転数 最大2100rpm(PWM)
騒音値 最大43dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅140×奥行き322×高さ27mm

28cmクラスのラジエーターを採用。ファンが14cm角なので、風量を稼ぎやすいのが特徴だ。ラジエーターが大きいと放熱部を広く取れる分より多くの風を当てられ、冷却面で有利になる。ただし、取り付け可能なPCケースが限られてしまう点には注意が必要だ。

H110iは電源周りにも気を使っており、ヘッド部からファン用電源のケーブルが伸びている。マザーボード上のファン用電源端子は1個だけでよい。動作のための電源はSerial ATA用電源端子から取るので、電源ユニットとつなぐ必要がある。

CORSAIRはCorsair Linkという独自ソフトを用意しているのも特徴だ。同社の様々な機器を一括管理できるソフトで、CPUクーラーではCPU温度の監視やファン回転数の制御などに対応する。ヘッド部のロゴはLEDで光り、その色の変更もできる。利用する際は、付属のUSBケーブルでヘッドとマザーボードをつなぐ。

銅製のCPU接触部

ヘッドのCPU接触部は銅製。ヘッドの形状に合わせて、接触部も長方形だ。

14cm角と大型のファンを2個搭載

14cm角と大型のファンを2個搭載する。LEDは内蔵していない。

マグネットで固定するヘッド部

ヘッドに取り付ける固定具がユニーク。ヘッド部に被せるだけでOKだ。ヘッドが内蔵するマグネットで固定される。

ヘッドから伸びる電源ケーブル

ヘッドからはケーブルが伸びている。端子は4ピンのファン用電源が2個、Serial ATA用電源と3ピンのファン用電源が1個。4ピン端子はファンに、3ピン端子はマザーボードにつなぐ。ヘッドのUSB端子はCorsair Link用だ。

設定使用するCorsair Linkの画面

Corsair Linkの画面。接続している機器が一覧で表示される。対応機器は表示項目をクリックすると設定変更ができる。ファンの回転数を変えたい場合は回転数の表示をクリックすればよい。

幅が広いラジエーター

H110iを取り付けたところ。ラジエーターの幅が広いため、マザーボードと干渉しやすい。取り付け可能かよく確認しよう。

保証外ながら拡張も可能
Celsius S24(Fractal Design)

Fractal Design Celsius S24 製品画像

対応ソケット Intel:LGA2011-3/2011/1366/1151/1150/1156/1155
AMD:Socket TR4/FM2+/FM2/FM1/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2
搭載ファン 12cm×2
ファンの回転数 500~2000rpm(PWM)
騒音値 最大32.2dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅122×奥行き284×高さ31mm

PCケースで有名なFractal Designの水冷CPUクーラー。ラジエーターのサイズは24cmクラスでファンは12cm角が2個だ。特徴は、ラジエーター部にファン用電源の分岐基板、「ファンハブ」を設けていること。ファンの電源ケーブルをまとめやすく、ケーブルがファンに絡まったりといったトラブルを避けられる。電源はポンプ用と同じケーブルから供給するので、マザーボード上の電源端子は1個しか使わない。チューブは浸透性の低いゴムチューブを採用。柔らかいので取り付けの際に取り回しがしやすい。

ユニークな点として、チューブが直付けではなく、G1/4という規格のフィッティング(継ぎ手)が使われていることがある。通常、一体型の水冷クーラーはメンテナンスフリーをうたい、分解できないようになっている。もちろんCelsius S24も付着したほこりを取る以上のメンテナンスは不要だが、ラジエーターを増やしたり、クーラントを交換したりといったこともできる。分解は保証の対象外だが、拡張に対応した一体型水冷クーラーは珍しい。

銅製のCPU接触部

ヘッドのCPU接触部は銅製。出荷時点でIntelプラットフォーム用の固定具が取り付けてある。

付属ファンはDynamic X2 GP-12とほぼ同じ外見

付属ファンは市販もされているDynamic X2 GP-12とほぼ同じ外見。しかしこちらはPWMによる回転数制御に対応している。

多くのプラットフォームに対応

対応プラットフォームの種類が多いのも特徴だ。Intel Core XシリーズのLGA2066やAMD Ryzen ThreadripperのSocket TR4にも対応している。

ファンハブには端子が3個ある

ファンハブには端子が3個ある。うち2個はファン用、残りの1個は電力供給用で、ヘッド部につながっている。

Celsius S24を取り付けたところ

Celsius S24を取り付けたところ。ケーブルをまとめやすく、CPUソケット付近をすっきりさせられる。

256色に光るファンを採用
Water 3.0 Riing Edition 280mm(Thermaltake Technology)

Thermaltake Technology Water 3.0 Riing Edition 280mm 製品画像

対応ソケット Intel:LGA2066/2011-3/2011/1366/1151/1150/1156/1155
AMD:Socket TR4/FM2/FM1/AM4/AM3+/AM3/AM2+/AM2
搭載ファン 14cm×2
ファンの回転数 800~1500rpm(PWM)
騒音値 18.5~26.4dB(A)
ラジエーターのサイズ 幅139×奥行き313×高さ27mm

※AM4アップグレードキットが必要

Thermaltake Technologyの水冷クーラー「Water」シリーズの最新モデル。256色に光るLEDを内蔵したRiingファンを採用した。最大で1500rpmと回転を抑えた静音仕様だ。チューブはゴム製で、カバーで覆っているため傷が付きにくい。

特徴は専用のコントローラーが付属する点。このコントローラーでファンの回転数の変更とLEDの光り方の設定ができる。そのため制御用のソフトをダウンロード、インストールしなくてもよい。またファンをコントローラーにつなぐため、マザーボードのファン電源端子はポンプ用と合わせて2個でOKだ。

取り回しがしやすいチューブ

ヘッドは他の製品と同様に銅製。チューブの根本は角度を変えられるので、チューブの取り回しがしやすい。

6種類の動作モードを備えるファン

ファンは赤、青、緑、白、オフ、256色に次々変化していく、という6種類の動作モードを備えている。マニュアルには青と記載してあったが、見た目は紫に近かった。

コントローラー以外の付属品は標準的

コントローラー以外の付属品は標準的。面ファスナーはPCケース内にコントローラーを固定するためのものだ。

ファンの速度や発光パターンを切り替えられるコントローラー

コントローラーの「SPEED」ボタンでファンの速度を2段階(800〜1500rpmと400〜1500rpm)で切り替えられる。「MODE」はLEDの発光パターンの切り替え。「PLAY/PAUSE」は色が変化するモードの際に、気に入った色で固定するためのボタンだ。

コントローラーをどこに固定するかが重要

Water 3.0 Riing Edition 280mmを取り付けたところ。ファンとコントローラーのケーブルが長いため、まとめる際はコントローラーをどこに固定するかが重要になりそうだ。

冷却性能と騒音値をテスト

それでは冷却性能と騒音値をテストしていこう。一般的に、水冷クーラーは空冷クーラーより冷却性能が高いと言われている。その実力を見て行く。前回の空冷と同様、CPU付属クーラーも参考にテストした。中央に銅製の芯が入っている、発熱の大きいモデルに付属するクーラーだ。ただ、Core i7-7700Kにはクーラーが付属しないので、別のCPUに付属していたものを使った。

今回テストに使用した環境は以下の通り。CPU温度は気温の影響を受けるため、環境が変わると結果も変わる。あくまで参考としてほしいが、製品間の傾向の違いは見えるだろう。

CPU Core i7-7700K
メモリー DDR4-2400 4GB×2
マザーボード SuperO C7Z270-CG
SSD Micron Technology Crucial MX300 275GB
PCケース Thermaltake Technology VIEW 31 TG
電源ユニット Thermaltake Technology TOUGHPOWER GRAND RGB 650W
OS Windows 10 Pro(Creators Update) 64ビット

室温は28℃、暗騒音は約30dB(A)。CPUの負荷には「OCCT 4.5.0」の「CPU:OCCT」テストを使用し、開始から約10分後の温度を採用した。CPU温度は「HWMonitor 1.31」の「Package」の値を使った。騒音は佐藤商事の騒音計「SD-23SD」をPCケース側面から30cmの距離に設置して計測した。PCケースの前後のファンは、CPU温度の測定時には動作させ、騒音値の測定時には停止させた。マザーボードのUEFIのファン動作モードは出荷時の「Quiet」を使用した。Celsius S24の動作モードはAuto、Water 3.0のファン動作モードは出荷時のものを使用した。

今回使用したテスト用PC

今回テストに使用したPC。天板にねじ穴が多くあいており、ラジエーターの位置調節がしやすい。

冷却性能

★★MasterLiquid 240

★★★H110i

★★Celsius S24

★★Water 3.0 Riing Edition 280mm

CPU温度

H110iが54℃と頭一つ抜けて低い温度となった。ラジエーターが大きいことが影響しているのだろう。

「CPU:OCCT」のテストはかなり負荷の高いテストだ。そのためCPU付属クーラーには荷が重いようで、上限に設定しておいた93℃に達してしまいテストを完走できなかった。温度は記録に残っていた93℃を使用した。

今回テストしたクーラーの冷却性能は高く、いずれも良好な結果となった。CPUの温度は常に変動しているため、MasterLiquid 240、Celsius S24、Water 3.0 Riing Edition 280mmの差は大きくないと言えるだろう。H110iは28cmクラスの大型ラジエーターと14cm角ファンの組み合わせのためか、他のモデルよりCPU温度が5℃以上低くなった。

同じ28cmクラスのラジエーターを使うWater 3.0 Riing Edition 280mmが24cmクラスのラジエーターを使う2モデルと近い結果なのは、ファンの回転数が低い仕様のためだと思われる。ファンの回転数を上げず、低い騒音値のまま他の製品と同レベルの冷却性能を維持できるのがメリットと言えるだろう。

騒音値

★★MasterLiquid 240

H110i

★★★Celsius S24

★★Water 3.0 Riing Edition 280mm

騒音値

H110iは冷却性能重視のためか、負荷時のファンの音はそれなりに大きい。一方、Celsius S24はアイドル時と負荷時でほとんど変わらなかった。

騒音値はファンの特性、回転数制御機能の挙動、ポンプの音など関係する要素が多く、実際に動かしてみないと分からない。冷却性能だけでなく、負荷をかけた際の動作音も騒音計で測った。

最も動作音の大きかったのはH110i。冷却性能も高いが、負荷時は比較的大きな音がする。ただ、あくまで他のモデルと比べてだ。低めの音なので、気にならないという人もいるだろう。

反対に最も低かったのはCelsius S24。今回のテストでは、Autoモードではファンの回転数が全く上がらなかった。そのためアイドル時とほぼ同じ騒音値となった。騒音値30dB(A)は深夜の住宅地くらいの静かさで、動作音は耳を近付けないと聞こえないほどだ。  MasterLiquid 240とWater 3.0 Riing Edition 280mmも負荷時にそれぞれ35.1dB(A)と33.5dB(A)。アイドル時からは上昇するものの、十分に静かだ。というのも、今回は製品間の違いを見るためにケースファンを止めて騒音値を計測している。ケースファンを2個動作させるとアイドル時の騒音値は約37dB(A)まで上昇するため、今回の環境で言うなら、それ以下なら実質的に違いはない。H110iもソフトでファンの回転数を制御できるので、同等なレベルまで静かにさせて運用することも可能だ。

見た目は似ているが個性豊か

一体型の水冷CPUクーラーは、ヘッド、チューブ、ラジエーター、ファンで構成されている。この構造は共通のため、どの製品も見た目はよく似ている。しかしテストしてみると思いの外製品ごとに違いがあるのが分かる。冷却性能重視、またはソフトでの微調整を楽しめる人であればH110iがお薦め。反対に手軽に静かな環境が欲しいならCelsius S24がよいだろう。LEDの装飾が好きな人にはWater 3.0 Riing Edition 280mmがぴったりだ。MasterLiquid 240は目立った特徴はないが冷却性能、騒音値、使いやすさのバランスがよく、価格も手頃だ。こうした観点から、自分に合った製品を見付けてほしい。

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(文・写真=SPOOL

※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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H110i

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オートモードを含む2つの冷却モードを搭載。240mmラジエーターを装備し、ファンハブを備えた水冷一体型CPUクーラー

Water 3.0 Riing Editionシリーズ

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Thermaltake

Water 3.0 Riing Editionシリーズ

256色の発光に対応したRiing LEDファンと放熱効率に優れたラジエーターを採用する水冷一体型CPUクーラー

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