働き方改革やテレワークの動きの広がりが、Web会議用Webカメラへのニーズへの高まりをもたらしている。従来のコンシューマー向けのローコストな製品から、昨今は、高品質な、ビジネス・法人向けに最適化されたWebカメラが増えてきている。そういった中、書画カメラで世界的に実績があり、画像処理技術には定評があるアバー・インフォメーションが法人向けの「プレミアムWebカメラ」に力を入れている。Webカメラ市場リーダーの一角としての地位を占める同社が新開発したスマートフレームのほか、ブラックを基調にした新しいデザインを実現し、YouTubeやFacebookへの映像配信にも対応した、フルHD対応のCAM520 Pro(かむ ごうにいまる ぷろ)の実力を検証した。
目次
製品内容の確認
箱から取り出したところ
オプションのUSB 3.1延長ケーブル(10m/20m)
(1)カメラ本体 (2)リモコン (3)電源アダプター・電源プラグ (4)USBケーブル(Type-A - Type-B)(5) HDMIケーブル (6)L字型取付金具 (7)マウント取付用ネジ (8)クイックガイド (9)保証書
以上のほか、オプションとして、10m USB 3.1延長ケーブル、20m USB 3.1延長ケーブル、ミニDIN6/RS232変換アダプター、折りたたみ式カメラマウント、も用意されている。
アバー・インフォメーションは、フルHD対応プレミアムWebカメラとして、中規模・大規模会議(7~24人)向けCAM520をすでに販売している。それに対して、このCAM520 Proは、7~24人会議室向けという点では同じだが、デザインを一新しスマートフレームやSNS映像配信の機能なども持たせた後継機という位置づけになる。
検証環境と内容
部屋A | ノートPC | CAM520 Pro | ディスプレイ(フルHD) |
部屋B | ノートPC | - | ディスプレイ(フルHD) |
(1)ローカル(部屋A)にあるディスプレイを使っての映像品質等の検証。
(2)社内ネットワークを経由してつながっているWeb会議を通して映像の検証。
検証1:CAM520 Proの本体
会議室に違和感なく調和する新しい洗練されたフォーム
やはり、アバー・インフォメーションのWebカメラで中規模・大規模会議室向けといえば、CAM520などを思い浮かべる人も多いと思う。そういった人たちがCAM520 Proを見てまず気が付くのは(筆者も含め)、一新されたデザインだと思う。黒色を基調に洗練された滑らかさをもつ、現代の会議室へ違和感なく調和するところに特徴があり、今後発売されるプレミアムWebカメラに適用されるようだ。ちなみに、このデザインはアバー・インフォメーション全社員での投票できまったという。
本体は、カメラ部とそれを支える回転台で構成されており、前面から見ると、回転台にはAVerの文字の上側にステータスライトが見える。これは電源ON時や待機時などに合わせて点灯色がかわるようになっている。また見えづらいがAverの文字の下側に赤外線受光部がある。デザインの中にシームレスに組み込まれている感がある。一方、台座部分の背面には、電源差込口のほか、LAN、USB、RS232(IN/PUT)、USB(3.1対応)、HDMIの各端子、そしてDipスイッチがある。さらに、底部には取り付け用のネジ穴もある。
検証2:CAM520 Proのセットアップ
他のプレミアムWebカメラと同様に簡単セットアップ。慣れれば数分もかからない。延長ケーブル、天吊りや壁掛けも含め設置場所は自由自在。
セットアップは他のプレミアムWebカメラと同様にUSBカメラであるため簡単。電源アダプターを差し込み、USBケーブル(USB3.1 Type-B、パソコンへ)をつなぎ、HDMIケーブル(液晶テレビなど)を接続するだけである。あとは電源を入れ、Web会議ソフト側でカメラの設定を行う必要はあるが特段難しいことは何もない。Webカメラを使った経験のある人であれば何も迷わないだろう。
なお、USBケーブルにはネジによるロックをかけることができるようになっている。アバー・インフォメーションのプレミアムWebカメラを使用している国内のWeb会議ユーザからのフィードバックによりCAM520から標準でついている。このロックで端子に接続されたUSBケーブルを外れないようしっかり固定する形になっている。
電源アダプターを差込み
USBケーブル(PCへ)
HDMIケーブル(ディスプレイへ)
LAN接続およびPoEを使って電源供給も可能
また、このCAM520 ProではLANポート(Power Over Ethernet対応)も装備されており、LANを通した電源供給にも対応している。さらに、インターネットに接続することで、後述のH.264 RTSP/RTMPに対応したストリーミング配信を行うこともプレミアムWebカメラとしては初めてこのCAM520 Proで行えるようになった。このカメラとインターネット接続があればすぐにYouTubeやFacebookでライブ配信が行えるようになっている。
また、同社が提供するプレミアムWebカメラ専用管理ソフトウェア「PTZ App」(後述)では、各種カメラ設定や制御などを行うことができるようになっている。カメラ制御用にRS232端子も装備している。
このCAM520 Proの設置場所は自由自在だ。ディスプレイのベゼル上部もしくは下部、あるいは、ディスプレイと隣接した会議卓の上に設置するというのが、もっとも一般的な使い方だろう。ディスプレイの上部であれば、専用のカメラマウントを使いその上に固定する形になる。なお、ディスプレイは32インチサイズ以上を同社では薦める。あまり小さいディスプレイだと、カメラが重さで不安定になり落下する恐れがあるためだ。
あとは、部屋の大きさやレイアウトに応じて、パソコンとカメラをつなぐための延長ケーブルを追加で使用することもできる(AVer純正オプション)。光ファイバーを使った延長ケーブルで最長20mまで対応する。そのほかこのCAM520 Proは天吊りや壁掛けにも対応している。後述の18倍ズームも組み合わせると大きな会議室や教室、講堂などで便利だろう。
検証3:CAM520 Proのカメラ性能(映像品質・パンチルトズーム・画像調整、静音カメラなど)
F値1.8の明るいレンズを採用し、多用な解像度選択が可能、高品質なWeb会議が可能
CAM520 Proは7~24人の大規模会議室に対応したフルHD対応プレミアムWebカメラ。レンズはF値1.8の明るいレンズを採用し、大規模会議室に最適な画角82°に対応している。解像度は、1920×1080、1600×900、1280×720、960×540、848×480、800×448、640×360、424×240、320×180、800×600、640×480、480×360、320×240を13もの解像度をサポートしており、フレーム秒は60、30、15に対応している。さまざまなWeb会議ソフトで異なる仕様に合わせやすく、また後述のYouTube/Facebookライブ配信にも品質を十分引き出した映像を出力できるといえよう。
画角は、82°と従来製品であるCAM520と同等で、一般的な縦長の会議テーブルを想定したカメラと考えると82°程度でも十分な画角ではないだろうか。ただこれは、ハドルルーム向けの120°をご存知/慣れた方からすると物足りなさを感じるかもしれないが、仮に大規模会議室に120°の画角のカメラを持ち込むと、たとえば什器や洋服掛けなど余計なものが映り込む可能性もある。この画角の絞りは実用を考えた適正かつ十分な広さだと思う。
画角の範囲外の物などを撮影したい場合は、CAM520 Proのパン機能を使えば左右±170°まで範囲を広げることでき、これであれば周囲365°にほぼ近い範囲で首振りが行え、プレミアムWebカメラのラインナップでは最大幅と言えよう。会議室内の隅々までの様子をカメラで十分に捉えることができるはず。さらに、チルト機能を使えば上90°・下30°と天井の様子から会議テーブルの上にある書類なども難なく見えるはずである。
パン機能で170°時計回りに回転させたところ
チルト機能で90°上向きに回転させたところ
また、もう一方の部屋とWeb会議を行ったところ、相手の表情までわかるクリアで明るい映像品質を実現していることを確認できた。加えて、今回の検証では、最大18倍のズーム機能を見るために、2.5m先のホワイトボードに書かれているわずか数センチの大きさの文字にズームをしてWeb会議の映像共有で確認してみたが、はっきりと視認することができた。フルHD対応テレビを使用しての接続だったが、ハイビジョンテレビを観ているレベルの品質が実現されている。
パンチルトに加え、CAM520 Proの最大18倍ズームも組み合わせて使うことで上下左右にとどまらず遠くのものまで、自在に部屋の中の様子をカメラでとらえることはできるだろう。
CAM520 Proを使ってのWeb会議の様子
カメラから2.5m先のホワイトボード
ちなみに、以前検証経験のあるCAM520の18倍ズームでは6m~7m先のホワイトボードも難なく読めた。新製品であるCAM520 Proも18倍ズームであるため、同等の距離のものを難なく撮影することができるだろう。また、パンチルトズームのこれだけの性能を組み合わせれば天吊りや壁掛けでも十分使えそうだ。
こういったカメラではパンチルトズームの各動作をさせるときのモーター音も気になるところだが、このCAM520 Proは静音カメラを搭載している。普段のオフィスの環境音の中では全く聞こえないといっても過言でもない。モーター駆動部あたりに耳を当ててようやく「これってモーター音かな。」という程度の静音レベルだ。本当に静かだ。
一方、リモコン(写真下)は、CAM520やCAM340+などで採用されている同社プレミアムWebカメラ共通で、パンチルトズーム時や最大10カ所プリセット(後述)などリモコン操作が行えるが、テレビなどのリモコン操作に慣れていれば全然問題ないだろう。
以上のほか、カメラの使い勝手を向上するプレミアムWebカメラ専用管理ソフトウェア「PTZ App」(Windows/Mac)も提供されている。ホワイトバランスや明るさ、シャープネスなどカメラ設定値の変更のほか、パンチルトズーム設定などカメラ制御、ファームウェア更新(自動もしくは手動)、診断ツール、ライブビデオ表示などの各機能を提供している。Web会議などの前の画像調整やカメラ制御に便利だ。このソフトウェアはアバー・インフォメーションのウェブサイトから無償でダウンロードすることができる。これはあると重宝する。
プレミアムWebカメラ共通のリモコン
PTZ App画面例
検証4:CAM520 Proのその他便利な機能(スマートフレーム、プリセット、SNSライブ配信)
カメラ操作からの解放、会議に集中できるAI機能も搭載、YouTube/Facebookライブ配信も
フルHDという一般的に普及している解像度に対応し、ほぼ円周近くまでカバーする首振りの範囲が大きいパンチルト機能、その上、大きな会議室でも遠くのものを難なく捉えることができる18倍ズーム、設置も自由自在で普段の会議では全く申し分ない性能と機能を装備したCAM520 Proをこれまでの検証で確認ができた。もちろん、それだけではない。CAM520 Proでは、カメラの利便性を高める機能がある。最大10カ所のプリセット機能(カメラ位置保存)と、新機能であるスマートフレーム(自動フレーム、写真下)だ。
写真(上)では人の顔に四角い枠が写っているが、これは分析API機能が参加者数をカウントしている状況。参加者数は8人のようだが、カメラは全員が収まるようにカメラの首振りを微調整する、この機能をスマートフレームという。この機能がないと、ユーザがパンチルトズームを駆使して手動でリモコン操作することになるが、スマートフレームはこれを自動で行ってくれる便利なものだ。ちなみに8人から3人に減っても、また元の8人に戻ってもそれに応じて動的にフレーミングしてくれる。反応は機敏だ。
一方、すでに決まったアングルやズームなどを複数設定しておきたいとなると、最大10カ所までのプリセットを使うのがとても便利。スマートフレームやプリセットを組み合わせることでカメラはさらに便利なツールになる。また、カメラの優位性は映像の品質やパンチルトズーム機能だけでなく、今後はAIをベースにしたこういった機能が標準になっていくだろう。こういった機能は、今回は実際には検証ができなかったが、アバー・インフォメーションが採用したYouTube/Facebookライブ配信機能にも対応したことにも活かされることになる。CAM520 Proは先述のとおりLANポートを搭載している。インターネットに接続させることで高品質なライブ配信が簡単に行える。
ライブ配信イメージ
まとめ:自社技術・自社製造・安心品質を実現したプレミアムWebカメラ
しかもコストパフォーマンスに優れ、十分な保証と保守サービスを提供
台湾メーカーであるアバー・インフォメーション。グローバルな遠隔会議システム市場で頭角を現している注目企業の一社だ。主要なWeb会議ソフトなどとパートナーシップも広範囲に展開している。
東京新宿区には日本法人であるアバー・インフォメーション株式会社がある。国内メーカーではない分不安に思われるユーザもいるかもしれないが、日本のほか、アメリカ、イギリス、中国、韓国などを含め世界11か国で拠点をもち、70か国に製品を提供している。自社技術・自社製造・安心品質をモットーにしており、台湾本社ビルには同ビル内に工場施設もある。製品開発と工場などとの連絡を緊密にしてより品質の高い製品開発に取り組んでいる。毎年、収益の30%を超える予算を研究・開発への投資に充てており、全世界で働く500名を超える従業員のうち、3人に一人が研究・開発に携わっている。教育向けの書画カメラで世界的なリーダー企業でもあり、この10年ほどテレビ会議システムやWebカメラの販売を手掛けている。画像技術には提供がある。
この機会に、CAM520 Proを検討してはいかがだろうか。
(文・写真=CNAレポート・ジャパン 橋本啓介)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。