ハドルルームで使用するWeb会議向けのWebカメラが活況を呈している。その中で台湾のアバー・インフォメーションのWebカメラが注目を得ている。アバー・インフォメーションは書画カメラでは世界的に実績があり、画像処理技術には定評がある。今回は同社が新発売した4K対応のコンパクト、ポータブルなプレミアムWebカメラであるCAM340+(かむ さんよんまる ぷらす)の実力に迫った。
プレミアムWebカメラ CAM340+
目次
製品確認
CAM340+の箱を開けると、以下のものが入っている。
- カメラユニット(USB 3.0接続、最大4K解像度、広角120度、内蔵マイク)
- 電源アダプタ(USB 2.0用)
- USB 3.0 Type-C to Type-Aケーブル(1.8m)バスパワー使用
- クイックガイド
※ その他オプションで赤外線リモコン(有償)やユーティリティソフト PTZApp(フリーライセンス、WindowsおよびMac対応)も提供されている。
検証:CAM340+セットアップ
一般的なWebカメラと手順は変わらない。簡単、数分もかからない。
折りたたみ式取付マウントをスタンドにしたところ
ハドルルーム向けのWebカメラ製品と言われると、最近注目されているテレビの前に置くバー型のスピーカーであるサウンドバーの形状をイメージする方もいるかもしれないが、さにあらず。まず、小ぶりな箱を開けて驚くのは、このCAM340+カメラユニット本体の形状だ。立方体の形(60×60×75mm、折りたたみ式取付マウント収納時)をしており、しかも軽い(0.251kg)。手のひらに乗るサイズと重さといえる。一見、コンシューマー向けのWebカメラを若干頑丈にした感じの体だ。この大きさ重さであれば持ち運びにはかさばらない。ちなみに、製品カラーはこの写真で紹介されている色のみとなる。
本体自体を少し詳しく見てみよう。前面にカメラが、そして頭頂部にはマイクが内蔵されている。そして背面にはPCとUSB接続するためのType-Cの端子とAC電源用の端子がある。CAM340+はUSB 3.0でUSB接続するとバスパワーにて電源供給される形になっているが、USB 2.0で接続する場合はAC電源を必要とする。そして底部には折りたたみ式取付マウントが収納されている。
さて、セットアップに取り掛かる。手順はコンシューマー向けのWebカメラと大差はない。至って簡単だ。同梱のUSBケーブルでPCとCAM340+をつなぐだけだ。プラグ&プレイでPCがCAM340+を認識しWeb会議用のカメラとしてすぐに使えるようになっている。また必要であればユーティリティソフト PTZAppで画質の調整なども行える。
クイックガイドは提供されてはいるが、市販のコンシューマー向けのWebカメラを使用した経験のある人であれば迷うことなくセットアップできるだろう。
カメラユニット背面端子にはType-Cで接続し、PCのUSBポートへはUSB(3.0)接続する。
筆者も驚いたがこんなに薄いディスプレイにもしっかりとのる。
CAM340+の特徴のひとつは、その本体のコンパクトさと軽量さにある。そのため、ディスプレイはもとより、テーブルの上、あるいは三脚などさまざまな利用環境にフィットするといえる。
ディスプレイの上に設置する場合は、単純にCAM340+本体をパソコンのディスプレイの上に乗せるだけだ。ただそのままでは落下するかもしれないので、カメラユニット本体に備わっている折りたたみ式取付マウントを利用する。ベゼルが4.5cm幅まで対応しているため、写真のような薄型のノートPCから、最近の一般的な薄型のディスプレイであれば難なく固定させることができる。
もちろん、テーブルの上に置く形でもいいだろう。その場合は、本体の折りたたみ式取付マウントを足にしてテーブルの上に立てることも可能だ。折りたたみの開閉を使ってカメラの最適なアングルを調整することもできるだろう。
三脚に設置する場合は、本体底部にある1/4インチ三脚取り付け用穴(4.5mm ±0.2mm)を使用する方法がある。ちなみに、セキュリティの面ではKensingtonセキュリティスロットも装備されている。
基本的なセットアップはUSB接続し、使うところに設置する、これだけだ。パソコンやWeb会議、ディスプレイなどの準備が事前にできていれば、CAM340+のセットアップは数分もかからないだろう。
検証:CAM340+映像品質
広角120度、4Kのクリアさ、ハドルルームでは申し分ない。
CAM340+はビジネスでの利用を想定している製品である。しかし、ユーザによっては、本体がこんなに小さいと、性能などの面で不安を感じる方もいるかもしれない。
だが案じるには及ばない。カメラユニットは、対角120度(水平110度/垂直75度)とハドルルーム向けとしては十分な視野角を実現している。しかも解像度は、4K(30fps)のほか、1080p(60/30/15fps)、720p(60/30/15fps)から320×180(60/30/15fps)まで複数の解像度に対応している。いくつかのSDレベルの解像度からHD、フルHDそして今後標準的な解像度になってくる4Kまでサポートしている。これだとWeb会議ソフト側でサポートしている解像度に合わせやすい。また電子的なパン・チルト・ズーム(ePTZ)にも対応している。ちなみにデジタルズームは4倍まで対応している。
それではさて、どれだけの実力があるか見てみよう。今回は純粋にこのCAM340+の性能を見るため、Web会議環境では行わずにローカルPC環境で検証を行った。Webカメラはネットワークの状況やそれぞれのWeb会議ソフトウェアの性能の影響を受けるためだ。
セットアップ後、一見しての印象は、CAM340+はコンパクトながら、明るくはっきりとしたクリアな映像を実現しているということ。ビジネスで使うには申し分ないクオリティを実現している。
ただ、室内環境でこういったWebカメラを使うと明るさが十分とれないことも多い。しかしCAM340+では問題なくローカル画面上に今回検証に立ち会った人たちの表情が明瞭に見えた。近くに窓があるため逆光補正機能も適切に効いているようだ。
画質の良さは十分納得だが、視野角はどうだろうか。このCAM340+の視野角は最近のハドルルーム向けのカメラの標準的な画角サイズである120度に対応している。CAM340+で実際にどのように見えるか試してみる。
CAM340+視野角能力を確認しているところ
画角120度
画角94度(旧製品)
写真のとおり、参加者4名にCAM340+を前にしてテーブルに横並びに座っていただいた。カメラまでの距離は85cm程度しかないが、4人(幅2m30cm)が問題なく画面のなかに収まっているのを確認した。ちなみに、CAM340+の最短焦点距離は80cmとなっている。会議テーブルの形状に合わせて座ったりすればフレームの中にもっと人をいれることも可能かもしれない。
比較のため、前のモデルのCAM340(対角94度)とも見比べてみた。その時の写真を見て欲しい。その差は歴然。94度の視野角では2人を画面内に収めるのが精いっぱい。一人か二人のWeb会議参加であればこれでもいいかもしれないが、4人から5人ぐらいとなってくるときついだろう。後ろに立ってもらえば可能かもしれないが。
あとはちなみに、カメラの利便性が向上するさまざまな機能を提供しているユーティリティソフトPTZ Appをお勧めする。Web会議前の画像調整(ホワイトバランスなど)、パン・チルト・ズーム(ePTZ)設定、ファームウェア更新、診断ツールなどが行えるようになっている。なお、このソフトウェアはアバー・インフォメーションのウェブサイトからダウンロードする。
この120度は、小規模会議室であるハドルルームでは余裕の視野角といえよう。会議卓の形状によっては2人~7、8人ぐらいは充分カバーできるだろう。
その他:他社製マイクスピーカーとの組み合わせ、さまざまなWeb会議ソフトウェアへの対応、赤外線リモコン、3年保証
ハドルルーム向けとは言え、本体のコンパクトさとポータブル性、折りたたみ式マウント、三脚などからさまざまな設置が可能かもしれない。たとえばオフィスとオフィスをつなぐ常時接続や監視などにも使えるかもしれない。ただ、中規模から大規模会議室であればCAM340+は力不足だろう。その場合はCAM520などをお勧めする。
CAM340+は指向性マイクを1基内蔵しており、直径6mの範囲の音声を集音できるようになっているが、アバー・インフォメーションでは、他社製のマイクスピーカーと組み合わせた使い方も提案している。
また、対応しているWeb会議システムに限定はない。一般的なパソコン向けのWeb会議システムであればどのシステムであっても、CAM340+で高品質な映像を提供することができる。
CAM340+はオプションで赤外線リモコンを購入できる。このリモコンは中規模~大規模会議室向けCAM520などと同じ、パン・チルト・ズーム、プリセット、各種画像設定が行えるようになっている。しかし購入の是非は悩ましいところ。なぜなら、パン・チルト・ズーム、プリセットという機能は中規模や大規模会議室でむしろ役立つ機能であるため、小規模会議室であるハドルルームで使用するのであればあまり使われる機能ではないかもしれない。CAM340+にとってはユーザの使い方によってあると便利というものだろう。
あと最後に大事なことをひとつ。アバーの強みのひとつは、他社にはない、すべての製品が3年保証を提供しているということだ。CAM340+購入は経費で落とせる価格だが、例外なく3年保障が付いている。ビジネスで使うには安心だろう。
まとめ
台湾メーカーのアバー・インフォメーション。国内には東京新宿区に日本法人であるアバー・インフォメーション株式会社がある。国内メーカーではない分不安に思われるユーザもいるかもしれないが、日本やアメリカ、イギリス、中国、韓国などを含め世界11か国で拠点をもち、70か国に製品を提供している。また、毎年、収益の30%を超える予算を研究・開発への投資に充てており、全世界で働く550名を超えるスタッフのうち、3人に一人が研究・開発に携わっている。教育向けの書画カメラで世界的なリーダー企業でもあり、この10年ほどはテレビ会議システムや今回話題に上げたWebカメラの開発販売も行っている。画像技術については定評がある。遠隔会議システム市場では頭角を現している注目企業の一社だ。
この機会にCAM340+を検討してはいかがだろうか。
(文・写真=CNAレポート・ジャパン 橋本啓介)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。