どれだけオンラインストレージが発展しても、USBメモリーや外付けHDDなど物理ストレージの役割がなくなることはない。そして物理ストレージが使われる限り、紛失や盗難を原因とした情報流出のリスクもなくなることはない。部外秘の情報を扱う人にとっては、いつも悩ましい課題だ。
そんな人に検討してみてほしいのが「セキュリティストレージ」だ。外付けストレージにセキュリティ機能が搭載されており、保存したデータを守れるという製品だ。製品によっては専用のソフトウェアを併用する場合もあるが、今回紹介する米Apricornの製品はストレージ単体で完結するタイプ。ロックを解除すれば通常のストレージとして利用できるため、互換性のトラブルが発生する心配は少ない。
ソフトなしで鉄壁のハードウェア暗号化機能
全ての機能をストレージ本体に搭載
今回紹介するのは「Aegis NVX」シリーズ。コンパクトな本体と高速な読み書き速度、高いセキュリティ機能が売りだ。筐体に6061アルミニウム合金を使用しており、耐久性にも優れている。
「Aegis NVX」シリーズは堅牢さが特徴の外付けセキュリティストレージ。外装だけでなく、内部に保存したデータも強力に守れる。
パッケージにはUSB Type-Cの延長ケーブルと、USB Type-CからType-Aに変換する変換ケーブル、そして持ち運び用のハードケースが付属している。
写真の通り本体にキーパッドが付いており、使用する際はPINコードを入力してロックを外すという仕組みだ。ロックを解除するまでは、PCからは何も接続されていないものとして扱われる。内部のデータは全て暗号化されているため、もし筐体を開けて内部のSSDを取り出したとしてもファイルを読み出すことはできない。二重のセキュリティ機能で重要なデータを保護できる。
ソフトウェアを使う方式では新しいPCに接続する度にセットアップが必要になり、すぐに使えないが、本体にPINコードを入力する方式ならその手間もない。高いセキュリティ能力に加えて、使いやすさにも優れているのがポイントだ。
「Aegis NVX」を接続して、Windowsのエクスプローラーを開いた。ロックを解除する前は何も表示されない(左)。PINコードを入力してロックを解除すると、ドライブが現れる(右)。
本製品の特徴はもちろんセキュリティ機能だが、NVMeに対応したPCI Express接続のSSDを採用した高い読み書き速度もポイントだ。インターフェースもUSB 3.1 Gen 2(最大10Gbps)に対応し、端子はUSB Type-Cを採用している。容量のラインアップは500GB、1TB、2TBの3モデルで、読み書き速度は容量によらず読み出しも書き込みも最大1GB/s。同シリーズのこれまでのモデルと比べて大幅に高速化している。
その他の基本仕様は以下の通り。
インターフェース | USB 3.1 Gen 2(5Gbps) |
容量 | 500GB、1TB、2TB |
最大データ転送速度 | 読み込み:最大1,000MB/s、書き込み:最大1,000MB/s |
本体サイズ(ケーブル除く) | 67×120×15mm |
本体重量 | 約200g |
暗号化 | AES 256bit XTS ハードウェア暗号化 |
サポートOS | Windows、Mac OS、Linux、Android、Symbian等 (USB給電可能でストレージがマウント可能である必要があります) |
承認規格 | IP67、FCC、CE、VCCI、RoHS |
保証期間 | 1年(代理店保証) |
※ 記載された製品名、社名等は各社の商標または登録商標です。
※ 仕様、外観など改良のため、予告なく変更する場合があります。
※ 製品に付属・対応する各種ソフトウェアがある場合、予告なく提供を終了することがあります。提供が終了された各種ソフトウェアについての問い合わせにはお応えできない場合がありますので予めご了承ください。
頑丈で分解も困難な筐体
外せない特殊なナットを使用
「Aegis NVX」シリーズの強さはセキュリティ機能だけではない。筐体は航空機の素材としても使われる6061アルミニウム合金を採用しており、とても頑丈。さらに内部は硬化エポキシ樹脂でポッティングしてあるため、振動で内部の基板が揺さぶられることもない。もともと衝撃に強いSSDを、さらに強固に守っているのだ。また、筐体を固定するねじはブレイクアウェイファスナーを使っており、ねじ頭やレンチを引っ掛ける面がないため通常の工具では開けられない。
外装はアルミ製。6061アルミニウム合金を採用しており、内部のSSDを衝撃から守る。手に取るとずっしりと重い。
筐体の固定にはブレイクアウェイファスナーと呼ぶ特殊なナットを使っており、通常の方法では開けられないようになっている。
インターフェースも特徴だ。USB Type-C端子を採用しており、PCにつなぐ際にいちいち上下の向きを確認する必要はない。ケーブルは直付けなので外出先でつなげられないといったトラブルも起こらない。使わない時は本体側面にケーブルを収納しておけるほか、ハードケースも付属しているのでかばんの中でケーブルが折れて断線してしまう心配もない。
インターフェースがUSB Type-Cになったことで、活用の幅も広がっている。近年のデジタルカメラはUSB Type-C端子を備えており、USBストレージへ直接写真や映像を記録できる機種があるためだ。特に映像を高解像度で記録する場合、高速で大容量のストレージは必須。Aegis NVXシリーズもそうした用途で利用できる。
プロフェッショナル向けのビデオカメラは、USB Type-Cで外部ストレージを接続できることが多い。
インターフェースの進化で高速化
実測で1GB/sの読み書き速度を実現
Aegis NVXシリーズの特徴には、読み書き速度が大幅に向上した点もある。過去の製品と比べてどの程度速くなったのか、実際に試してみた。使用したのは500GBモデルの「Aegis NVX 500GB(ANVX-500GB)」。SSDは容量が大きいほど高速になる傾向にあるが、本製品は全容量で同じ速度が得られる。
比較に使用したのは「Aegis Padlock」シリーズのHDD搭載モデルとSSD搭載モデルの2機種。HDDモデルは「Aegis Padlock USB 3.0 2TB(A25-3PL256-2000)」で、HDDを内蔵している分サイズが少し大きめ。SSDモデルはコンパクトデザインが特徴の「Aegis Padlock SSD 120GTB(ASSD-3PL256-120F)」だ。いずれもUSB 3.0(最大5Gbps)対応なので、USB 3.1 Gen 2(最大10Gbps)対応のAegis NVXシリーズはこの時点で有利だ。もっとも、USBの規格上の速度はあくまで最大値。実際の読み書き速度は試してみるまで分からない。
「Aegis Padlock USB 3.0 2TB(A25-3PL256-2000)」。本体が大きめのため、PINコードを入力するボタンも大きく押しやすい。
「Aegis Padlock SSD 120GTB(ASSD-3PL256-120F)」。こちらもUSBケーブルを本体側面に収納できる。
パソコンに接続して、実際にテストした結果が以下のグラフだ。テストには「CrystalDiskMark 8.0.4c」(ひよひよ氏)を利用した。テストのプロファイルは「NVMe SSD」を使用し、テスト結果は「SEQ1M Q8T1」と「RND4K Q32 T16」の数値を使用した。テストはそれぞれ3回ずつ実行し、おおむね中央の結果を採用した。
公称値の通り、Aegis NVXは順次読み書き共に1GB/sを超えている。Aegis Padlock SSD 120GBと比較すると5倍以上の速度だ。ランダム読み書き速度も大きく向上しており、こちらは読み出しでは12倍以上もの差がついている。
順次読み書きの速度は、やはりAegis NVX 500GBが圧倒的。実測で1GB/sを超えているのは圧巻だ。Aegis Padlock SSD 120GBはSSDらしくAegis Padlock USB 3.0 2TBより大幅に高速だが、それでもAegis NVX 500GBの1/5程度。インターフェースだけでなく、内蔵しているSSDの速度がそれに見合うほど大きく向上したことが分かる。Aegis Padlock SSDは大容量モデルであればスペック上最大350MB/sとなっているが、それでもAegis NVXシリーズには大きく及ばない。
また、ランダム読み書きの速度も大幅に引き上げられている。割合で言えば、順次読み書きよりもランダム読み書きの方が大きく伸びた。HDDモデルのAegis Padlock USB 3.0 2TBと比べるとランダム読み出し速度は300倍以上となり、もはや比較にならない。これは容量の小さいファイルを大量に扱う際の処理速度に効いてくる。
高速で安全なセキュアストレージ
安全性はそのままに、使い勝手が大きく向上
ここまでAegis NVXシリーズの特徴を見てきた。従来モデルと比較した際の魅力は、やはりUSB Type-C端子による使い勝手の良さと高い読み書き速度だろう。従来モデルはセキュリティが売りということもあり、読み書き速度は一般的な外付けSSDと比べて少し物足りない面があった。しかしAegis NVXシリーズではインターフェースの限界に近い読み書き速度を備えており、セキュリティだけでなく純粋にストレージとしても高性能になった。より活躍の場が広がったと言えるだろう。
次回はより具体的に、どんなセキュリティ機能を備えているかを紹介する。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。