ハイエンドのマザーボードはATXより大きい基板を採用している場合があり、使用する際は事前の確認が必要だ。特に気を付けなければならないのが2009年に登場した「XL-ATX」。拡張スロットの数を増やし、ATX規格の305mmより縦に長い製品をXL-ATXと呼ぶ。ほとんどのATXケースは305mmに合わせて作られているため、収められるケースが限られてしまう。
3R SYSTEMの「T300-BK」はその少ない選択肢の一つだ。拡張スロットのスペースは10本分。一般的なATXマザーボードの拡張スロットは7本なので、かなり余裕がある。その分高さは600mmと大きく、見た目のインパクトはかなりのものだ。
シャシーは厚さ0.8mmと1mmのスチール板で構成しており、がっしりとしている。スチールを用いていることで重量もあり、ケースの安定性は抜群だ。
フレームの縁はほとんどの箇所を折り返してあるので、組み立て中に手を切って怪我をすることはまず無い。内部まで黒で塗装してあるのも統一感があって良い。大型のPCケースを探している人はぜひ検討して欲しい。
T300-BKの外観。前面はメッシュで覆われている。主な仕様は以下の通り。実勢価格は2万円だ。
対応フォームファクター | Extended ATX、ATX、MicroATX、Mini-ITX |
シャーシの材質 | スチール(0.8mm、1mm) |
外形寸法 | 幅230×奥行き555×高さ600mm |
重量 | 13.6kg |
ドライブベイ | 5インチ×6(うち1個は3.5インチと共用) 3.5インチ×7(うち6個は2.5インチと共用) |
拡張スロット | 10 |
ファン | 前面20cm角相当×1(搭載済み) 背面12/14cm角×1 上面20cm角相当×1(搭載済み、12/14cm角×2に交換可能) 底面12/14cm角×1(14cm角用マウンター有り) |
前面端子 | eSATA×1 USB 3.0×1 USB 2.0×3 音声入出力 |
拡張スロットが10本と多い。上部に水冷のチューブを通すための穴がある。前面USB 3.0端子のケーブルもここを通すと良いだろう。 |
マザーボードのべースにはケーブルを通すための穴が多く空いている。拡張スロット部には留め具があり、拡張ボードをねじを使わずに固定できる。 |
前面端子はeSATA、USB 3.0、USB 2.0×3、音声入出力を備える。USB 3.0はマザーボードのI/Oパネルの端子を延長するタイプだ。両端のダイアルはファンコントローラー。奥(写真上)には小物を置くためのスペースがある。 |
ねじやワッシャー、マザーボードのスペーサーなどが付属する。右上のケーブルはCPU用+12Vの延長用だ。大きいPCケースだと届かない場合がある。 |
ベイの数は多く、SSDにも対応
ドライブベイは5インチ、3.5インチがそれぞれ6個。5インチベイの前面は少し変わった構造だ。ベイの右側が一部外れる。フロントベゼルはここから外す。ベイ側面には留め具が付いており、ねじ無しでドライブを固定できる。
最下段には3.5インチへの変換アダプターが付いており、外部3.5インチベイとしても使える。内部3.5インチベイはマウンター方式。HDDを底面からねじ留めする。HDDを留める板はマウンター本体とばねでつながっており、振動をシャシーに伝えにくい構造になっている。マウンターには2.5インチドライブ用の穴が空いており、SSDも取り付けられる。
正面の右側を一部外せる。外すとフロントベゼルを固定するつめが現れる。 |
5インチベイの留め具。中心を押して右にずらすと固定できる。 |
3.5インチベイはマウンターを使う方式だ。3.5インチドライブはばねで浮かせる形になる。 |
20cm角相当の大型ファンを2個搭載
前面と上面に20cm角相当のファンを搭載するほか、背面と底面に12/14cm角を1個ずつ追加可能。上面ファンは12/14cm角ファン2個に交換できる。底面は樹脂製の留め具があり、14cm角ファンを用いる場合は取り付けにねじは不要だ。
前面パネルのファンコントローラーは内部で3本の3ピンケーブルとつながっており、合計6個までのファンを一括して制御可能。ペリフェラル4ピン端子で給電する。
また、上面は開閉できる構造だ。端にあるスライドスイッチで操作する。開けるとケース内の熱を上部に排気できる。
上面は羽根のような形状で、写真のように開閉できる。PCを使わない時に閉めておけば、ほこりの侵入を防げる。
内部が広いため、組み立ての際にパーツが干渉する心配はほぼ無い。メーカーでも奥行き320mmの拡張カードを装着できると案内しているとおり、ボードサイズの長いハイエンドグラフィックボードを装着する場合も安心だ。
マザーボードのベースにはケーブルを通す穴が多く空いており、配線を裏側に回してすっきりさせられる。ただし、電源ユニットのケーブルが短いと各端子まで届かなくなってしまう場合もあるため、注意が必要だ。裏面を通すと特に届かなくなりやすいCPU用+12Vは延長ケーブルが付属するものの、あらかじめケーブルの長い電源ユニットを選んだ方が良いだろう。
付属ファンはとても静かだ。ファンコントローラーで回転数を落とすと、耳を近付けないと音が聞こえないほど。回転数を最大にしても気にならないレベルだ。回転数を落とした場合に冷却性能が極端に落ちないか実際に検証した。CPUにCore i7-2600K(3.4GHz)、グラフィックスにGeForce GTX 560 Ti搭載ボードを使用。ベンチマークソフトの「OCCT Perestroika 4.0.0」で負荷をかけた。その結果、ファンの回転数を最小にしても、室温24℃の部屋でCPU温度は70℃に抑えられた。回転数を最大にするとさらに3℃下がった。これなら最小で運用しても問題無いだろう。
パーツを一通り組み込んだ。一般的なATXマザーボードが小さく見えるほど、内部は広い。縦横どちらの方向にもまだまだ余裕がある。
ファンの回転数を最大にすると負荷時にCPU温度が3℃下がった。
(文・写真=SPOOL)
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
- ●3R SYSTEM社 概要
- 韓国、中国を拠点に自作用PC ケースを開発、製造販売しております。ユーザーが求めやすい低価格なPC ケースを中心に販売しており、韓国では、No1 のシェアを獲得しています。日本市場へも同様に低価格で機能、デザインにこだわった製品を提供し続けてまいります。
- メーカーウェブサイト:http://www.3rsys.com/