日本はものづくり大国として有名ですが、その立役者は3D CADといえるでしょう。
しかし、3D CADというとこんな声もよく耳にします。
「3D CADは何ができるソフトなの?」
「特徴や機能、必要なIT機器がわからない」
3D CADとは、3次元のコンピュータ支援設計ツールであり、精密な立体モデリングからシミュレーションまで、あらゆる設計ニーズに応えます。
この記事を読めば、最適な3D CADソフトの選び方から、それをフルに活用するためのIT機器選びまで、具体的なメリットを理解できるので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
3D CADとは
定義 | コンピューターを使用して三次元のオブジェクトやモデルを設計する技術 |
主な用途 | 建築設計、機械設計、製品設計、映像制作、ゲーム開発 など |
利点 | 詳細なデザイン、正確な寸法、効率的な修正・テスト、ビジュアル化 など |
主な機能 | 形状作成・編集、寸法付け、テクスチャー・色付け、3Dレンダリング など |
対象ユーザー | 建築家、エンジニア、製品デザイナー、アーティスト、教育者、学生 など |
開発元 | Autodesk、ソリッドワークス社、PTC、ダッソー・システムズ など |
関連製品 | AutoCAD、SolidWorks、PTC Creo、CATIA、Blender、SketchUp など |
3D CAD(3Dコンピューター支援設計)は、コンピューターを使って3次元のオブジェクトやモデルを設計するための技術です。
3D CADを利用することで、建築物、機械部品、製品デザインなど、さまざまなものを正確かつ詳細にデザインできます。
また、仮想空間でオブジェクトを作成、編集、視覚化することもでき、実際に物を作る前にデザインを詳細に検討し、改善することが可能です。
3D CADは、製品の設計からテスト、生産に至るまでの工程を効率化し、より高品質で正確な製品を生み出すのに役立ちます。
3D CADの特徴3つ
3D CADの主な特徴を3つ挙げると、以下の通りです。
- 立体的(3次元的)なモデリングができる
- ミリ単位で正確な設計が可能
- シミュレーションができる
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
①立体的(3次元的)なモデリングができる
3D CADの最も重要な特徴の一つは、「立体的(3次元的)なモデリングができる」という点にあります。
簡単に説明すると、コンピューター上で実際の3次元空間に存在するかのようなオブジェクトを作成できるということです。
通常の絵や写真は2次元で、高さと幅しか表現できませんが、3D CADでは高さ、幅に加えて奥行きも表現可能です。
たとえば、建物をデザインする場合、3D CADを使用すれば単に平面図を描くだけでなく、その建物の内部まで確認できる立体的なモデルを作成できます。
これにより、建物の内部や外部をあらゆる方向から視覚化でき、より現実に近い形でデザインの確認が可能です。
この3次元的なモデリング機能は、製品の設計、建築、機械工学など多岐にわたる分野で応用されています。
②ミリ単位で正確な設計が可能
3D CADのもう一つの大きな特徴は、「ミリ単位で正確な設計が可能」という点です。
普通の手書きのスケッチや基本的な描画ツールでは、細かい寸法の精度を確保するのは極めて難しく、欠点の一つでもありました。
しかし、3D CADではオブジェクトの各部分の寸法をミリメートル単位で指定することが可能です。
これにより、非常に小さな部品から大きな建築物まで、正確なサイズで設計することが可能になります。
たとえば、機械の部品を設計する場合、その部品が正しく機能するためには、寸法の正確さが非常に重要です。
3D CADを使えば、これらの部品を非常に正確に、そして緻密に設計することができ、実際の製造プロセスでのエラーを最小限に抑えることができます。
このように、3D CADは正確な寸法設定が可能なため、製品の品質と機能性を向上させるのに有効です。
③シミュレーションができる
3D CADの3つ目の特徴は、「シミュレーションができる」という点です。
シミュレーション機能を使うと、実際に物を製造する前に、そのオブジェクトがどのように機能するかを確認できます。
たとえば、機械の部品がどのように動くか、建物の構造がどれだけの重量に耐えられるか、風や他の環境要因がオブジェクトにどのような影響を与えるかなど、さまざまな状況を試すことが可能です。
これにより、設計段階で潜在的な問題を発見し、改善することが可能になります。
実際に部品を製造する前に、設計を最適化することになるので、より効率的で安全な製品を作れるようになるのは革新的といえるでしょう。
総じて、3D CADのシミュレーション機能は、製品の性能を向上させ、製造コストを削減し、安全性を確保するのに大いに役立ちます。
3D CADの機能5つ
では、3D CADにはどういった機能が備わっているのでしょうか。3D CADの基本的な機能は以下の5つです。
- パラメトリックパーツモデリング
- アセンブリモデリング
- スケッチ
- コラボレーション
- 板金モデリング
初心者の方には耳慣れない言葉も多いかと思います。それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
①パラメトリックパーツモデリング
「パラメトリックパーツモデリング」とは、3D CADの非常に重要な機能の一つで、部品や製品のモデルを作成する際に使用される機能です。
この方法の特徴は、部品の形状や寸法を数値のパラメータ(変数)で定義することにあります。
簡単にいうと、ある部品を作るための「レシピ」を作成するようなものです。
このレシピには、部品の長さ、幅、高さなどの寸法が数値で記されています。これらの数値を変更するだけで、同じ形状の異なるサイズの部品を簡単に作ることができるのです。
たとえば、ある部品の長さを100mmから120mmに変更したい場合、パラメトリックパーツモデリングを使用すると、その数値を変更するだけで自動的に部品のサイズが調整されます。
そのため、設計の変更や修正が非常に効率的に行え、時間と労力を節約することが可能です。
②アセンブリモデリング
「アセンブリモデリング」とは、複数のパーツ(部品)を組み合わせて一つの製品やシステムを作り上げる機能です。
先述したパラメトリックパーツモデリングが「個々の部品の設計」に注力しているのに対し、アセンブリモデリングは「それらの部品がどのように連動して機能するか」を扱います。
たとえば、時計を設計する場合、パラメトリックパーツモデリングで歯車や針などの個々の部品を設計し、アセンブリモデリングでこれらの部品がどのように組み合わさって時計全体として機能するかを考える、というイメージです。
また、アセンブリモデリングでは、各部品の配置、方向、動きの範囲などを指定できます。
これにより、部品同士が実際に組み合わされたときの動作や相互作用をシミュレートし、設計上の問題を事前に発見して修正することも可能です。
この二つの機能を組み合わせることで、3D CADは複雑な製品やシステムの設計に非常に強力なツールとなります。
③スケッチ
「スケッチ機能」は3D CADにおいて非常に基本的かつ重要な機能の一つです。
スケッチ機能を使うと、ユーザーは平面上に線、円、曲線などを描いて、部品や製品の基本的な形状を定義できます。
この段階では、細かい寸法や詳細よりも、大まかな形状や概念を捉えることが重要です。
たとえば、新しい携帯電話のデザインを考える際、スケッチ機能を使ってその大まかな形状やボタンの配置などを描きます。
この初期スケッチは後に、パラメトリックモデリングやアセンブリモデリングで使われる3Dモデルの基礎となるのです。
要するに、スケッチ機能は3D CADにおいて設計の「出発点」となる機能であり、複雑な3Dモデリングに進む前に基本的なアイデアを視覚化するために重要な機能といえます。
④コラボレーション
「コラボレーション機能」とは、3D CADの中で複数の人が同じプロジェクトに取り組むための機能です。
コラボレーション機能を使うと、チームメンバーはそれぞれの変更や更新を互いに見ることができ、設計に関するフィードバックや提案を即座に交換することができます。
たとえば、Autodeskの「AutoCAD」や「Fusion 360」、ソリッドワークス社の「SOLIDWORKS」などの3D CAD製品には、クラウドベースのコラボレーション機能が搭載済みです。
コラボレーション機能は、特に大規模なプロジェクトや複数の専門分野が関わる複雑なプロジェクトにおいて重要な機能といえます。
⑤板金モデリング
「板金モデリング」は、金属板を曲げたり、穴を開けたり、切断したりする際に特有の性質や制約を考慮して、効率的かつ正確に部品を設計するために使われる機能です。
板金モデリングでは、まず平らな金属板の形状を設計します。
その後、この平板を必要に応じて曲げたり、カットしたりして最終的な部品の形状に近付けていくのが一般的な操作手順です。
金属の種類や厚さ、伸縮性(延性)などの物性も考慮できるので、金属板が曲げた際や切断の際にどのように反応するか、どの程度伸び縮みするかを事前に確認できます。
たとえば、自動車のボディパーツや家電製品の筐体などでは、多くの製品で板金部品を使わねばなりません。
この際に、板金モデリングを使用することで、これらの部品の設計を効率的に行い、実際の製造過程での問題を事前に把握し、修正することが可能です。
これにより、設計上の問題を早期に特定し、対処することができるため、製造コストを削減し、製品の品質を向上させることが可能です。
3D CADの種類3つ
1990年代に3D CADが登場して、すでに30年以上が経ちます。
そのため、3D CAD製品は非常に数が多く、すべてを把握するのはもはや不可能といっていいかもしれません。
しかし、基本的にその種類は「ハイエンドCAD」「ミッドレンジCAD」「ローエンドCAD」の3種類に分類できます。
①ハイエンドCAD
「ハイエンドCAD」とは、3D CADの中でも最も高度で複雑な設計が可能なソフトウェアのカテゴリーです。
特に、大規模な工業プロジェクトや専門的なエンジニアリングの領域で使用されます。
特徴は、高度な機能、強力なシミュレーション能力、そして大規模なデータを扱うことができる点です。
また、非常に精密な設計が要求されるため、高い性能を持つCADソフトウェアが必要なことには注意しておきましょう。
ハイエンドCAD製品の代表例
- CATIA
航空宇宙や自動車業界で広く使われている、ダッソー・システムズによる高度な設計ソフトウェア - PTC Creo
PTCによる包括的な設計ソフトウェアで、複雑な製品設計とシミュレーションに対応 - Siemens NX
シーメンスによる統合ソリューションで、設計、シミュレーション、製造プロセスを一貫して扱える
ハイエンドCADソフトウェアは、高度な技術と専門知識を必要とするため、一般的には高価です。
しかし、それに見合うだけの価値を有しており、複雑な製品の開発において不可欠なツールとなっています。
②ミッドレンジCAD
「ミッドレンジCAD」とは、ハイエンドCADとローエンドCADの中間に位置する3D CADソフトウェアのカテゴリーです。
一般的な工業設計や製品開発に必要な機能を搭載しつつ、ハイエンドCADほどの高度な機能や複雑さは持たず、比較的手頃な価格で利用できます。
使いやすさと機能性のバランスが特徴で、3Dモデリング、基本的なシミュレーション、図面作成などの機能を利用することが可能です。
ミッドレンジCAD製品の代表例
- SOLIDWORKS
ダッソー・システムズの製品で、使いやすさとパワフルな機能で知られる - Autodesk Inventor
Autodesk社の専門的な3Dメカニカル設計、ドキュメンテーション、製品シミュレーションツール - OnShape
PTC社製クラウド型のミドルレンジ3D CAD
ミッドレンジCADは、高価なハイエンド製品に比べて手頃で、かつ基本的なCAD機能を幅広くカバーしているため、多くの設計者やエンジニアにとって理想的な選択肢となっています。
比較的簡単に扱えるため、初心者や学生にも人気です。
③ローエンドCAD
「ローエンドCAD」とは、最も基本的で手頃なカテゴリーの3D CADソフトウェアです。
一般的に低価格または無料で利用可能で、基本的な設計機能を持っています。
この種のCADは、個人ユーザーや教育目的、小規模なプロジェクトに適しており、使いやすさや直感的な操作に重点を置いているのが特徴です。
主な利点は、初心者や非専門家でも容易に取り組むことができる手軽さといえるでしょう。
複雑な機能や高度なシミュレーション能力はありませんが、基本的な3Dモデリングや図面作成のニーズには対応可能です。
ローエンドCAD製品の代表例
- SketchUp
3Dモデリングにおいて直感的かつ簡単なアプローチが人気 - TinkerCAD
無料から使えるオンライン3D設計ツールで、子供などの教育用途に特に適しています - DraftSight
基本的な2D図面作成に特化した、ダッソー・システムズのソフトウェア
ローエンドCADは、特に予算が限られている個人や小規模事業者にとって、3D設計の入門ソフトウェアとして非常に有用です。
また、プロの設計者やエンジニアにとっても、初期アイデアのスケッチや簡単なプロジェクトに使う手軽なツールとして役立ちます。
3D CADを活用するメリット・デメリット
ここまで、3D CADに関する基本的な知識を解説しました。
3D CADがいかに便利なツールであるかはご理解いただけたかと思います。
しかし、3D CADは万能という訳ではありません。メリットもあればデメリットも存在します。
特に、これから業務に3D CADを導入しようと考えている方は、以下に紹介するメリット・デメリットについては事前に理解しておきましょう。
3D CADを活用するメリット
3D CADを活用するメリットは、主に以下の5つです。
- 視覚的な理解ができる
- 試作品(プロトタイプ)が作れる
- 高精度な設計が可能
- 2次元図面にも落とし込める
- 全体的な設計品質の向上
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
メリット① 視覚的な理解ができる
3D CADを使用する最大のメリットの一つは、「視覚的な理解ができる」という点です。
3D CADは、設計されたオブジェクトや構造を3次元で表示することができ、これにより設計者や関係者は、製品やプロジェクトが実際にどのように見えるかをリアルタイムで把握できます。
この視覚化機能により、設計の各側面をより明確に理解でき、潜在的な問題点を早期に特定し、修正することが可能です。
また、関係者間でのコミュニケーションが改善され、設計の意図や詳細を効果的に伝えられるのもメリットといえるでしょう。
総じて、3D CADによる視覚的な表現は、設計プロセスをより直感的で理解しやすいものに変え、製品開発の品質と効率を向上させる役割を果たします。
メリット② 試作品(プロトタイプ)が作れる
3D CADを活用するもう一つの重要なメリットは、「試作品(プロトタイプ)が作れる」という点です。
3D CADを使用すると、実際の物理的な試作品を作る前に、デジタル上で製品の詳細なモデルを作成し、その機能や外観をテストすることができます。
これにより、設計者は製品の設計を早い段階で評価し、必要に応じて改善を加えることが可能です。
実際の試作品を製造する前に、多くの設計上の問題を発見し、解決することが可能になるため、最終的な製品開発プロセスがより効率的かつ効果的になります。
つまり、3D CADによるデジタルプロトタイピングは、製品開発のリスクを低減し、市場投入までの時間を短縮するための強力なツールです。
メリット③ 高精度な設計が可能
3D CADを活用する3つ目のメリットは「高精度な設計が可能」という点です。
3D CADは、非常に正確な寸法設定と詳細なモデリングができるので、設計者は複雑な形状や精緻な部品をミリ単位、時にはそれ以上の精度で設計できます。
この高い精度は、製品の性能を向上させるだけでなく、部品同士の適合性や組み立ての際にも非常に便利です。
また、正確な設計は製造過程でのエラーや材料のロスを減らし、コスト削減にも繋がります。
簡単にいえば、3D CADによる高精度な設計は、製品の品質を向上させ、生産効率を高め、最終的な製品の信頼性を確保することができるのです。
メリット④ 2次元図面にも落とし込める
3D CADを活用する4つ目のメリットは、「2次元図面にも落とし込める」という点です。
3D CADでは、3次元で設計されたモデルから、必要な視点や断面で2次元の図面を簡単に生成できます。
これは、製造や組み立て、検証などのプロセスで、2D図面が必要な場合に特に役立つ機能です。
たとえば、簡単な部品の断面を確認する時などは2次元図面の方が理解しやすいため、ケースバイケースで使い分けられるのは非常に便利といえるでしょう。
また、3D CADで作成された2D図面は、3Dモデルと完全に連動しており、モデルが更新されると図面も自動的に更新されます。
このように、3D CADを使うことで、3次元の詳細な設計を2次元の図面に簡単かつ正確に転換することが可能になり、製造プロセスの効率を大幅に向上させることが可能です。
メリット⑤ 全体的な設計品質の向上
3D CADを活用する5つ目のメリットは、「全体的な設計品質の向上」です。
先述したように、3D CADは詳細なモデリング、精密な寸法設定、そして高度なシミュレーション機能により、製品の設計段階からその品質を大幅に向上させる機能が詰まっています。
そのため、設計の不具合や潜在的な問題を早期に発見し、修正することができ、結果として製品の性能、安全性、耐久性などを向上させることが可能です。
自動車、建築、航空宇宙産業など、多岐にわたる分野でこの利点が活かされており、3D CADは製品開発の効率化と品質向上のための重要なツールとなっています。
3D CADを活用するデメリット
3D CADを活用するデメリットは、以下の3つです。
- 製品によっては導入コストが高い
- 設計者に頼りすぎると作業量が増える
- 初心者には操作と理解が難しい場合もある
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
デメリット① 製品によっては導入コストが高い
3D CADのデメリットとして最初に挙げられるのが「製品によっては導入コストが高い」という点です。
たとえば、「CATIA V5」や「Siemens NX」、「PTC Creo」などのハイエンド製品は、スペックによっては数百万円のコストがかかる場合があります。
これに加え、ソフトウェアをフルに活用するために必要な高性能なハードウェアや専門的なトレーニングも追加のコストとして考慮しなければなりません。
したがって、特に小規模企業や個人ユーザーにとっては、導入コストが大きな負担となる可能性があります。
デメリット② 設計者に頼りすぎると作業量が増える
3D CADの2つ目のデメリットは、「設計者に頼りすぎると作業量が増える」点です。
3D CADは複雑な設計や精密なモデリングが可能ですが、これにより設計者の負担が増加することがあります。
たとえば、建築設計において、建物の各部分の詳細を3Dで表現する場合、これには多大な時間と労力が必要です。
その他にも、クライアントからの細かい修正要求に応えるために、設計者は頻繁にモデルの更新を行う必要があり、作業量が大幅に増えることが多々あります。
このように、3D CADの高度な機能を最大限活用しようとすると、設計者の作業量や責任が増加し、プロジェクトの進捗に影響を与える可能性もないとはいい切れません。
デメリット③ 初心者には操作と理解が難しい場合もある
3D CADの3つ目のデメリットは、「初心者には操作と理解が難しい場合もある」という点です。
3D CADは非常に高度なツールであり、多くのコマンドや機能が存在します。
そのため、初心者は操作方法の習得や、複雑な設計プロセスの理解に苦労することも多いです。
たとえば、形状の作成や変更、特定の設計要件の適用など、3D CADの高度な機能を使いこなすためには、時間と経験が必要です。
その他にも、思い通りに形状を作成できない、変更が困難、エラーが発生して先に進めないなど、例を挙げるとキリがありません。
このように、3D CADは高度な機能と柔軟性を持っていますが、初心者にとって学習曲線が急であることがデメリットとなることがあります。
3D CADのモデリングのやり方
3D CADをまだ触ったことのない初心者の方であれば、どのようにモデリングをするのか気になる方もいらっしゃると思います。
ここでは、3D CADのモデリングのやり方について、順を追って解説します。
STEP① 平面スケッチで輪郭を形成
3D CADモデリングの最初のステップは、平面スケッチで輪郭を形成することです。このステップは、モデリングの基盤となる重要な部分になります。
平面スケッチの手順
- スケッチの開始
最初に、作業する平面を選択します。 - 輪郭の描画
ツールを使用して、必要な形状の輪郭を描きます。直線、曲線、円、楕円など、さまざまな形状を組み合わせて作成します。 - 寸法と制約の適用
スケッチした輪郭に寸法を設定し、必要に応じて制約(たとえば、線の長さや角度、平行・垂直関係など)を追加します。 - モデルの精緻化
輪郭の形状やサイズを調整し、必要に応じて更に変更を加えます。ここでの作業は、最終的な3Dモデルの品質に直接影響を与えます。
以上の操作でスケッチは完了です。次に進みましょう。
STEP② スケッチの押し出し、回転を行って立体へ
第2ステップでは、完成した平面スケッチを使って実際の3Dオブジェクトを作成します。
この段階では、主に「押し出し」と「回転」の操作を使用するので、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
押し出し操作
スケッチされた2D輪郭を選択し、「押し出し」ツールを使用して、輪郭を一定の距離だけ立体的に延長します。
この操作により、平面図から直方体や円柱形などの3D形状が作成されます。
押し出しの深さや方向は、設計の要件に応じて調整できるので、厚みを持った3Dパーツを形成することも可能です。
回転操作
特定の輪郭を選択し、「回転」ツールを用いて、その輪郭を一定の軸周りで回転させ、対称形状の3Dオブジェクトを作成します。
この操作は、円形や球形、円錐形などの対称的な形状を作成する際に特に有用です。
押し出しや回転によって作成した形状は、必要に応じてさらに編集・調整が可能です。
たとえば、角を丸めたり、特定の部分を切り取ったりすることで、最終的な形状を微調整します。
以上の操作で3次元のオブジェクト自体は完成しますが、さらに精確なモデルにするためには細かい調整が必要です。
STEP③ 押し出しや回転などでの細かい形状の調整
3つ目のステップでは、さらに細かな形状の調整を行います。
この段階では、「スイープ」、「ブレンド」、「フィレット」といった高度なモデリング技術を使用せねばなりません。
スイープ(Sweep)
スイープは、一つの輪郭または断面を、指定されたパス(軌道)に沿って移動させることで、3D形状を作成する際に使う機能です。
管やレールなど、一定の断面形状を持ちながらパスに沿って変化するオブジェクトに適しています。
ブレンド(Blend)
ブレンドは、異なる形状やサイズの2つ以上の断面を滑らかに接続することで、複雑な形状を作り出します。
異なる直径を持つ円筒をつなげるなど、段階的な変形が必要な場合に有効です。
フィレット(Fillet)
フィレットは、モデルのエッジやコーナーを丸める操作です。これにより、オブジェクトの外観が滑らかになり、応力集中を減らすことができます。
製品の快適性や安全性を高める際に使用する操作技術です。
スイープ、ブレンド、フィレットを適切に使用することで、設計者はより複雑で実用的な製品を設計することができます。
初心者であれば、ここまで操作できなくても問題ありませんが、慣れてきたらトライしてみましょう。
3D CADで活用する人気ソフト一覧
先述したように、3D CADは多くの分野・業界で使用されている技術であり、関連ソフトも種類が非常に多いです。
そのため、どのソフトを選べばいいのかわからない方も多いでしょう。
ここでは、「ハイエンドCAD」「ミッドレンジCAD」「ローエンドCAD」の3つのジャンルで活躍している人気ソフトをご紹介します。
ハイエンドCAD3選
ソフトウェア名 | 開発会社 | 特徴・使用業界 | 価格情報 |
---|---|---|---|
CATIA | ダッソー・システムズ社 | 航空機、自動車、宇宙事業 | 160万円~540万円 |
NX | シーメンスPLMソフトウェア社 | 製品の構想から設計、生産までの一元管理 | 要相談 |
Creo Paramatoric | PTC社 | トヨタ自動車、SHARP、SONYなどの自動車・家電業界 | 114万円~120万円 |
CATIAは、航空機、自動車、宇宙事業など、複雑な設計が求められる業界で広く利用されているハイエンドCADです。
高度な3D設計、シミュレーション、製品管理機能を提供し、特に複雑な形状やシステムの設計に強みを持っています。
NXは、製品の構想から設計、生産までのプロセスを一元管理できる高度なCADソフトウェアです。
高いカスタマイズ性と拡張性を持ち、多様な業界のニーズに対応することができます。
Creo Parametricは、自動車や家電業界で広く使用されている3D CADです。
トヨタ自動車、SHARP、SONYなどの大手企業が利用しており、直感的なUIと強力なパラメトリック設計機能が特徴です。
高い柔軟性とスケーラビリティで、幅広い設計ニーズに応えることができます。
ミドルレンジ3D CAD3選
ソフトウェア名 | 開発会社 | 特徴・使用業界 | 価格情報 |
---|---|---|---|
Solidworks | Solidwork社 | 1995年リリースの3D CADの草分け | 98万円~158万円 |
OnShape | PTC社 | クラウド型のミドルレンジ3D CAD | スタンダード版16万円/年 プロフェッショナル版21万円/年 |
Inventor | Autodesk社 | パラメトリック・フィーチャベースの3D CAD, 製造業、機械設計 | 367,000円/年 |
SolidWorksは、1995年にリリースされた3D CADの草分けで、主に機械設計や製品設計で使用されることが多いです。
直感的なUIと強力なモデリング機能が特徴で、中小規模の企業や教育機関で特に人気があります。
OnShapeはクラウドベースのミドルレンジ3D CADソフトウェアです。
クラウドベースなので、どこからでもアクセス可能で、コラボレーション機能も充実しています。
また、データのバージョン管理や共有が容易で、特にリモート作業や複数のチーム間での協力が必要な場合は検討すべきソフトウェアといえるでしょう。
Inventorはパラメトリック・フィーチャベースの3D CADで、主に製造業や機械設計で利用されるソフトウェアです。
高精度なモデリング機能と高度なシミュレーション能力を備えており、複雑な設計や製品開発に適しています。
ローエンド3D CAD3選
ソフトウェア名 | 開発会社 | 特徴・使用業界 | 価格情報 |
---|---|---|---|
Fusion360 | AutoDesk | クラウドベースの3D CAD/CAM/CAE, 製造業(機械・電子機器など) | 5〜6万円/年 |
DesignSpark | RSコンポーネンツ | 基本的に無料で使用可能、電子工学関連で使用されることが多い | 無料 |
SketchUp | Trimble Inc. | 建築・インテリア業界で主に使用され、直感的な操作感が人気 | 8,000〜2万円/年 |
Fusion 360は、クラウドベースの3D CAD/CAM/CAEソフトウェアです。
高度な設計機能に加えて、シミュレーション、協働作業、3Dプリンティングのサポートなども可能です。
DesignSparkは、RS コンポーネンツが提供する無料の3D CADソフトウェアで、特に電子工学関連のプロジェクトに適しています。
簡易的な設計から複雑な3Dモデリングまで、幅広いニーズに対応しています。
SketchUpは、初心者からプロフェッショナルまで幅広く利用される3Dモデリングソフトウェアです。
建築、インテリアデザイン、都市計画など多様な分野で使用されます。
直感的なユーザーインターフェースと豊富なテンプレートがあり、初心者でも簡単に3Dモデルを作成可能です。
また、無料版(SketchUp Free)も提供されています。
3D CAD制作に最適なIT機器をご紹介
3D CADを業務に導入しようと考えているのなら、それに応じたIT機器も必要になってきます。
特に、ハイエンドCADを検討している場合、スペックによっては操作性が悪くなってしまう可能性も捨てきれません。
以下にご紹介する製品であれば、3D CADの機能をフルスペックで使用することができます。
ご検討の際は、ぜひ参考にしてください。
グラフィックボード(NVIDIA RTX/Quadroシリーズ)
3D CADの作業は、膨大なデータ量と複雑な計算を要求されます。そのため、高性能なグラフィックボードが不可欠です。
「NVIDIA RTX/Quadro」シリーズは、そのような要求に応えるために特化して設計されています。
多数のCUDAコア、大容量のメモリ、そして高速なデータ転送速度を備えており、最も複雑な3Dモデルの作成、リアルタイムレンダリング、大規模なCADプロジェクトにおいても、スムーズで効率的な作業が可能です。
特に「NVIDIA RTX 6000 Ada 世代」は、大容量の48GB GDDR6メモリにより、巨大なデータセットを扱う際のパフォーマンスが飛躍的に向上します。
また、RTX/Quadroシリーズ独自の機能である「NVIDIA Mosaic」は、複数のモニターを使用した広範な作業スペースを実現し、設計者がより大きな視野での作業を行うことを可能にします。
3D CADをプロフェッショナルな作業に利用する場合は、検討して損はありません。
詳細はこちらのリンクからご確認ください。
ワークステーション
3D CADでは、精密さとスピードが成功の鍵です。
複雑な設計と計算を扱うことになるので、パワフルなワークステーションが必要不可欠となります。
NVIDIA社のGPUを搭載したワークステーションやサーバーであれば、このような要求にも十分に対応可能です。
ワークステーションメーカー各社は、プロフェッショナルレベルのビジュアライゼーション、レンダリング、そしてリアルタイムでのデータ処理を可能にするために、高性能NVIDIA GPUを搭載したモデルをリリースしています。
これにより、あらゆる複雑な3D CAD作業を高速に実行し、設計のイテレーションを迅速化し、市場への導入時間を短縮します。
レンダリングについても、従来のCPUベースよりも圧倒的に速く、またリアルタイムレンダリングによって、設計プロセス中にも瞬時に変更を視覚化することが可能です。
エンジニアリングシミュレーションや分析においても、GPUの並列計算能力を駆使して、よりリアルで物理法則に忠実なモデリングを可能にします。
詳細はこちらのリンクからご確認ください。
その他パソコン機器
3D CADを業務レベルで導入するには、グラフィックボードやワークステーション以外にも求められるスペック・IT機器は数多くあります。
たとえば「大容量のRAM」、「高速プロセッサ」、「高速ストレージ」、「大型かつ高解像度のモニター」、「快適な入力デバイス」など、例を挙げるとキリがありません。
そのため、自社にあった製品を一つひとつ検討し始めると、多くの時間がかかってしまうことになるでしょう。
そんな時はぜひ「アスク」にご相談ください。
弊社は業界でもトップクラスのパートナーシップ契約数を誇るIT機器に関するスペシャリスト集団です。
150社以上のメーカーの製品を取り扱っており、お見積りのご相談から導入のサポートまでワンストップで提供しています。
お見積りのご相談は無料で承っているので、3D CADに関するパソコン機器を検討する際は、こちらのリンクからご連絡ください。
まとめ
3D CADは、設計から製造に至るプロセスを革新し、今日のエンジニアリングとアーキテクチャの領域において不可欠なツールとなっています。
この記事では、3D CADの基本から、その特徴や機能、さまざまな種類のソフトウェア、そしてそれらを最大限に活かすためのIT機器選びまでを網羅しました。
理解を深め、適切なツールを選ぶことで、視覚的な理解の促進、試作品の迅速な作成、精度の高い設計など、数多くのメリットを享受できます。
しかし、高コストや操作の複雑さといったデメリットも認識し、それらに対処することで、3D CADの真のポテンシャルを引き出すことが可能です。
今後、技術の進化と共に、3D CADのツールはさらに洗練され、設計プロセスの可能性を広げていくでしょう。
本記事から得られた知見を、実際の設計プロセスの改善、教育ツールとしての活用、または購入判断の参考にしていただければ幸いです。
監修者:麻生哲
明治大学理工学部物理学科を卒業後、ITベンチャーにて多数のプロジェクトを成功に導く。子会社を立ち上げる際には責任者として一から会社を作り上げ、1年で年商1億円規模の会社へと成長させることに成功。現在は経験を活かし、フリーランスとしてコンテンツ制作・WEBデザイン・システム構築などをAIやRPAツールを活用して活動中。
※ 本記事は執筆時の情報に基づいており、販売が既に終了している製品や、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
株式会社アスクでは、最新のPCパーツや周辺機器など魅力的な製品を数多く取り扱っています。
製品に関するご質問や納期のご確認、お見積り依頼など、お気軽にお問い合わせください